登山ガイドの川上さん写真展 信州の自然の魅力伝えたい

「雪山でしか見られない景色がたくさん」と冬山の魅力を語るのは、登山ガイドの川上康人さん(35、松本市並柳2)。
3千メートル級の山々がそびえ「日本の屋根」と呼ばれる長野県。雪化粧した山々は美しい。写真を通して信州の自然の魅力を伝えたいと、2月2日から松本市和田の登山用品専門店カモシカスポーツ2階で、川上さん初の写真展が開かれる。
川上さんは昨年まで10年間、北アルプスの双六小屋でアルバイトからスタートし、支配人まで務めた。冬山にはまったのは山小屋生活がきっかけだ。5~10月の繁忙期は小屋でがっつり働き、冬は仲間と冬山を満喫。
展示では、冬山の美しさだけでなく、山小屋で感じた気候変動や地球温暖化の危機感も訴える。

冬山だからこその美しさ紹介

川上康人さんの個展「One ALPS Shinshu」は、長野県の冬山がテーマだ。
昨年まで勤めた双六小屋在籍期間中に登った冬山は50座以上。展示では、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ケ岳にフォーカスした8コースを紹介している。各コースで川上さんが印象に残る写真を4枚ずつ選んだ。ロープウエーで行けて日帰りできる冬山入門コースから、急な岩場などがある3泊4日以上の上級者コースなど、レベル別になっている。
険しい山容、天候の不安定さ、降雪量の多さなど、冬季の難易度は最も高い北アルプス。常念岳~蝶ケ岳~大滝山~鍋冠山は、川上さんが歩いたコースの一つだ。蝶ケ岳山頂からの写真には、夕日に照らされ、ひだがくっきりと浮き出たシュカブラ(雪面にできる波の模様)と雄大な穂高連峰が写る。朝日で淡いオレンジ色に染まる常念岳、奥穂高岳に映る前穂高岳のギザギザとした北尾根のシルエットは、「雪のキャンバスだからこその美しさ」という。冬山でしか見ることができない魅力的な景観を紹介している。

環境を考えるきっかけにも

もともと山好きだった川上さんは、「好きなことを突き詰めたい」と2014年から双六岳の小屋で働き始めた。繁忙期(5~10月)を避けた期間に山小屋仲間らと冬山に登り、知識や装備、登り方などを教わってから、どっぷりとはまった。風速20メートルの強風にあおられたり、腰ほどの深さの雪をかき分けて進んだり─。天気や条件に恵まれず、撤退することの方が多かったというが、「見たことのない景色を見てみたい」と、登頂できるまで挑戦を続ける。
展示では山の美しさ以外に、地球温暖化や気候変動への危機感を訴える。山小屋に勤めたこの10年で、降雪量の減少や雪渓の解けるスピードの加速などの変化を、自然と寄り添う環境にいるからこそ強く感じた。
川上さんは「山や自然の美しさだけでなく、環境問題について、(写真展が)少しでも考えるきっかけになったら」と期待する。
展示は25日まで。無料。午前10時半~午後7時。3月はカモシカスポーツ横浜店(横浜市)でも展示する。
(写真は川上さん提供)