作家・北杜夫さんの松本での暮らしぶりは―日記と標本から拝見

旧制高等学校記念館で「北杜夫『憂行日記』をたどる」

戦中・戦後の混乱期を旧制松本高校で過ごした作家北杜夫さん(本名・斎藤宗吉、1927~2011年)。松本での暮らしぶりや採集した昆虫の標本などを展示した「北杜夫『憂行日記』をたどる」が、松本市県3の旧制高等学校記念館で5月6日まで開かれている。

同館、信州大附属図書館などの主催。「憂行日記」は松高時代に書いた大学ノート6冊分。終戦間近の1945(昭和20)年6月に松本へ来て思誠寮に入り、美ケ原へ登り多くの昆虫を採集したこと、7月の上高地登山、8月に大町の軍事工場へ動員されたことなどがつづられている。
同展は、日記の抜粋と、内容に合わせて北さんが集めたチョウなど昆虫の標本を配置したのが特徴だ。例えば、6月28日美ケ原へ登り「馬フンがあったので、ほじくって見たら、思わず喚声をあげた。…エンマコガネの類がウヨウヨして居る」と記した日記パネルの下には、多数のコガネムシの標本が並ぶ。終戦前後に国内で採集された昆虫標本は希少で、当時の自然を伝える貴重な財産という。
また、北さんと同じくコガネムシ愛好家の平沢伴明さん(安曇野市)が2011年、発見した新種を「マンボウビロウドコガネ」と名付け、北さんも「照れくさいけど光栄」と喜んだエピソードなどを紹介した。
同展の企画を担当した信大附属図書館の小島浩子さん(51)は「松高があった場所で、北さんの松高での生活や、採集した昆虫などを展示できた。当時の学生生活や自然を感じてほしい」と話す。
北さんは小説「どくとるマンボウ」シリーズなどで知られる一方、少年時代から昆虫、中でもコガネムシ類の収集に力を注いだ。
午前9時~午後5時、入場無料。月曜休館(祝日の場合は翌日)。問い合わせは信大中央図書館(TEL0263・37・2172)、旧制高等学校記念館(TEL0263・35・6226)へ。