伝統行事「巻き俵」飾り付け

大町市美麻の国重要文化財「旧中村家住宅」で5日、伝統行事「巻き俵(わら)」があった。芯の周りに稲わらを巻き重ねたタケノコ形の俵の表面に新しいわらを巻き付けて飾り、家内安全や五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る行事。大北地域の一部に伝わるが、途絶えた地域が多く、市民や、市文化財センター職員が継承を願って飾り付けた。

同住宅では、主屋が建てられた江戸時代から320年以上続くという。参加者は、表面のわらを少し取り除いた後、新しいわらを巻き足し、竹のくいを打ち込みながら縄でしばり、全体のバランスを整えた。俵は、長さ1メートル20センチ、直径50センチ、重さ20キロほど。1対にして、茶の間の神棚の前につるした。
この日は一般の人も見学に訪れ、一緒に俵に縁起物を飾り付けた。安曇野市の明南小3年の波場未帆さん(9)、2年の来仁(らいと)君(8)きょうだいは「(いろりの煙でいぶされた)昔のわらが黒くなり残っていて驚いた。飾り(縁起物)もすごい」と話し、興味津々で作業を見守った。
1日の能登半島地震の揺れで俵のひもが切れ、片方落下したが、建物などに被害はなかったという。例年作業に携わる北沢孝一さん(73、大町市美麻)と市川尊典さん(85、大町)は地震の被災地を案じ「戦争も続く中だが、穏やかな年になってほしい」と願った。
同住宅は3月末まで冬季休館中。