映画が変えた運命 フレディ・マーキュリーに捧ぐこだわり推し活

「良く言えばこだわり、悪く言うと…変態!」。英国のロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリー(1946~91年)の推し活(応援活動)をする保育士、岩淵小姫子(さきこ)さん(安曇野市穂高)は明るく高笑いする。
「フレディになり切る」のが岩淵さん流。ステージ衣装はもちろん、普段着た服も忠実に再現。いすや花瓶などにもこだわり、ポスターや写真に残る場面を再現する。その細かさに驚かされる。
「歌のうまい人」とは思っていたが、2018年公開のフレディの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見、放心状態になるほど感動した。「心からリスペクトしているから、いい加減な表現はしたくない」。こだわりの一部を紹介すると―。

好きを追求「生きる原動力」に

好きになった人になりたい。岩淵小姫子さんは映画「ボヘミアン・ラプソディ」を運命の出合いと話す。音楽や構成の素晴らしさ、そしてフレディ・マーキュリーの生きざま―。その日から、推し活が始まった。
CDを買ったり、インターネットで情報を仕入れたり、本を読みあさったり。県内外の映画館へ通った。30回以上見たといい、応援上映でコスプレをしたのが、フレディになりきる第一歩になった。
物心つく頃からまねをすることが大好き。過去にはジャッキー・チェンやマイケル・ジャクソンを追いかけた。地元劇団の代表も務め、「自分がなり切って他の人に楽しんでもらう。芝居の感覚に似ている」
映画の中でフレディが着ているイエロージャケットが欲しくなり、劇団メンバーと一緒に作った。クイーン好きの輪も広がり、「好きなものを共有できる満足感」も味わった。次の応援上映には何を着ていこう―。洋裁経験はなかったが、近くの専門家の門をたたき勉強。今では型紙から手がける。
写真やライブ映像を見て採寸し、比率で寸法を計算し、自分ぴったりに仕上げる。アクセサリーや小物は、似た物、同じ物を見つけ購入する。クイーン仲間が情報をくれることもある。オークションで「似ている物を」と落札した着物が、フレディがステージで着たものと全く同じデザインの色違いだったという、ファンにとっては叫びたくなるような偶然も味わった。「服を作ることで、フレディの考えや思いに触れられる気がする」
「悩んだこともあったが、フレディに救われた。生きる原動力」と岩淵さん。昨年はロンドンに出かけ、聖地巡礼を果たした。いずれ「フレディに捧ぐ岩淵小姫子の世界」を開き、衣装などを展示するのが夢だ。