【演奏会ピックアップ】音楽文化ホール・新オルガニスト山田由希子さんに聞く- 楽器の魅力や今後の目標は

松本市島内の市音楽文化ホールに4月、ホールオルガニストとして山田由希子さん(東京都)が就任した。5月24日には記念コンサート(事前申し込み制で予定枚数終了)が開かれる。力を入れていきたいことやオルガンの魅力などを聞いた。

多くの人に音楽への親しみを

―ホールの印象は。
昨年度からホール主催のオルガンレッスンの講師としてほぼ毎月、東京から通っています。「オルガンを弾きたい」という人の多さや熱意に感激しています。
ホールのドイツ・ベッケラート社のオルガンはドイツ的な重いサウンド、ずっしりしていますね。8年ほど住んでいた北オランダや北ドイツの歴史あるパイプオルガンは重厚な音質だったので、懐かしい雰囲気を感じています。

―オルガニストとしての活動は。
昨年度就任されたレジデントオルガニストの小林淳子さん(松本市)と2人体制で、私はホール主催のオルガンコンサート出演やセミナーの講師などを、小林さんは日常的なオルガンの管理と、小型オルガンを持ち出しての出張コンサート、セミナー講師などを担当します。
本年度は3回、オルガンコンサートに出演します。5月の就任記念コンサートは、バッハを軸にその前後の世界をテーマにして、「オルガン音楽の歴史と変遷」を届けます。
12月7日にはセイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)の首席客演指揮者・沖澤のどかさんによる、日本を代表するプロ合唱団「東京混声合唱団」と共演します。
来年1月25日は、ホールオルガニストのコンサートシリーズ第1弾として、ジャズサクソフォン奏者とクラシックの名曲を奏でます。オルガンのさまざまな表情を感じていただければと思います。

―パイプオルガンの魅力は。
小学生の時にパイプオルガンと出合い、時に繊細で荘厳な響きに圧倒されました。中学3年生から本格的にレッスンを始めましたが、両手両足を駆使し、頭を混乱させながらのフィジカルな難しさと、オルガン作品の楽曲の難しさと格闘する毎日です。
オルガンは1台として同じものがなく、そこに自分を合わせていくことで順応性が試され、人間性が養われていく。国によっても違い、そこまで自分が出かけていかないと出合えない楽器です。想定通りにいかないことが多いけれど、それが魅力。この特別な楽器といる時間が大好きです。

―読者にメッセージを。
松本は芸術文化の意識が高くセンスにあふれた街と感じています。オーケストラやオペラなどを鑑賞されている方も多いでしょう。より多くの人にオルガン音楽にも親しんでいただくのが目標です。
ホールのオルガンは1987年に設置され、歴史を重ねてきた楽器だということを知ってもらいたいし、セミナー受講生の「楽しく弾きたい」という気持ちを手助けしていきたい。
ホールの響きも残響がかなり強めで素晴らしい。オルガンは空間を全部含めて音を届ける楽器なので、ホールに足を運んで聴いてもらいたいです。オルガンの魅力を発信できるよう、微力ながらお手伝いさせていただきたいです。

【プロフィル】やまだ・ゆきこ 東京芸術大音楽学部器楽科オルガン専攻卒業、同大学院修了後に渡欧。オランダ政府の給費留学生として北オランダのクラウス公フローニンゲン音楽院に留学。最優秀オルガンディプロマを取得し卒業。国際コンクールなど入賞歴多数。現在は桜美林芸術文化ホール専属オルガニスト、桜美林大芸術文化学群講師などを務める。