松川村 昔の写真展 感想や質問で対話

村の未来を考える足がかりに

国道の両側に並ぶ商店、村民運動会、小学校の旧校舎や校庭のスケートリンク…。松川村すずの音ホールに並ぶのは、主に昭和の村の日常を切り取った約40点の写真だ。
単なる“懐かしの写真展”ではない。村公民館が10日まで開いている企画「―+(マイナスプラス)50白紙からの対話」で、備え付けのノートに感想や被写体の情報、質問を自由に書き込める。
「昔の冬は寒かったですね。氷が張ってスケートをやった事がなつかしい思い出です」「校てい(庭)でスケートやってみたいです」。筆跡の異なる書き込みが続く。企画した村地域おこし協力隊の狙いは、多世代による対話の促進だ。

情報や思いを自由に書いて

大きな台の上に真っ白な紙を敷き、国鉄時代の信濃松川駅舎やかつての松川郵便局舎、駅前周辺の光景、東京五輪(1964年)と長野五輪(98年)の聖火リレー、学校プール建設の勤労奉仕とみられる作業風景など、数々の写真を並べた。見た人に写真について知っている情報や質問、回答などを書き込んでもらう参加型の展示にするため、撮影年や場所、被写体などの説明は当初から付けていない。
ほとんどがモノクロ写真。白い紙の上に置かれて、強い印象と共に目に飛び込んでくる。紙の余白には、来場者が寄せた情報による撮影場所や年代、写っている店や人の名前などが手書きで記されている。
企画したのは、松川村地域おこし協力隊の松本寿治さん(40)と寺口純平さん(44)。村内にある小林写真店の店主・小林俊彦さん(76)から昨年、父で初代の頼男さん(故人)や俊彦さんらが撮影した昔の写真が、幾つか残されていると知らされていた。
協力隊の二人は「これを借りて展示し、村の人が見たら喜ぶと思うが、通常の写真展ではつまらない」と考えた。
展示写真についての情報、気付きや思いをノートに書き込んでもらう形式にすれば、次に見る人の考えや感情に、影響を与えたり新しい視点を提供したりできるのでは。「世代間の対話が少ない現代。住民が持っている貴重な写真の展示を一つの手段として、同席しなくても世代を超えた“対話”ができる場をつくりたい」という“実験的プロジェクト”をデザインした意図を語る。
「写真の活動が今にどんな影響を与えていますか?」「写真の場面で自分なら何をしてみたい?」…。展示スペースの一角に、こんな50個の「問い」を記した。「エモい(心を揺さぶられる)で終わらず、見る人が写真にあるような昔と現在とにどんな違いがあるかを理解し、村の未来を考えていくこと」への足がかりにできたら、という思いからだ。

世代問わず反応多彩に

会場を訪れ、少年時代を思い出しながら写真に見入った平林明人前村長(81)。わら細工講習会と思われる場面での集合写真に視線を落とし、「これ、中村さんじゃない?」。連絡を受けて来場した中村祐介さん(91)は、40、50年ほど前の自分を見つけて「ああ、そうだね!」。表情には驚きと懐かしさがにじんだ。他の写真も眺めて「われわれの年代には懐かしいが、若い人たちにはピンとこないのでは」と語った。
「昔の松川村に住んでみたい!」とノートに記したのは、松川小学校6年の白澤未羽さん(12)。手作業が多かった昔の暮らしぶりに興味を示し、「(手で植える)田植えなどは面白いし、達成感があって楽しそう。昔から続く『あめ市』などは今後も引き継いでいったらいい」と話した。
松本さんは「温故知新。地域の幸せな未来へ向けて対話する姿勢が広がっていけば」と期待している。
問い合わせは村公民館TEL0261・62・2481