歯並びの良い子に育てるために

歯の啓発活動に取り組む歯科医 岡藤敬子さんに聞く

赤ちゃんの口から見える小さな歯はとても愛らしい。将来、歯並びやかみ合わせの不調に悩むことなく育てたいものだ。歯並びの良しあしは、胎児の時から影響があるという。歯科医で歯の啓発活動に取り組む岡藤敬子さん(57、松本市蟻ケ崎)に聞いた。

妊娠中の姿勢も影響

正しい舌の位置を確認

岡藤さんによると矯正を希望する子どもは▽富士山型の口(母乳の「浅飲み」による口機能の未発達)▽口呼吸▽舌の使い方や飲み込み方ができていない|というケースが多いと指摘。これらの原因は、妊娠中の母親の姿勢の崩れから始まっているという。
まずは正しい舌の位置の確認から。口を閉じている時、舌の先が上の前歯の2~3ミリ後ろの歯茎に触れ、舌全体が上顎にくっついているのが正しい状態。舌は筋肉。長期間前歯を押す位置にあると歯を動かし歯並びを悪くする可能性がある。
胎児の頃、後に歯となる細胞「歯胚(しはい)」ができるので妊婦の姿勢が悪いと歯並びに影響する。お勧めの座り方は、そけい部に手を当て骨盤を立てて座り、膝より足指が中にある姿勢だ。

「鼻呼吸」が健康の基本

次に「鼻呼吸」の重要性。岡藤さんは赤ちゃんの頃の鼻呼吸が健康の基本になるとし、「将来的に歯並びや姿勢の乱れを防いでくれる」と指摘。このために抱っこの仕方が大切。赤ちゃんは自分で姿勢をつくることができないので、体が反って顎が上がった姿勢にならないように、「ぎゅー」とではなく「ふんわり」と抱く。
顎が上がると、本来は上顎に付いている舌が下がり、口呼吸になる。体が反ったら抱き方を変え、口が開いたら閉じる。赤ちゃんの骨は成長スピードが速いのでなるべく同じ姿勢でいないように。

母乳の飲み方深飲み習慣に

母乳の飲み方は「深飲み」を習慣に。口先で吸わせるのではなく口を完全にふさいで飲ませることが大切。口を大きく開いて乳首を含ませ、上顎にくっつけてしごきながら飲むイメージ。上顎が刺激されて広がることで歯がきれいに並ぶための口の空間もつくられ、鼻呼吸にもつながる。
寝ている赤ちゃんに声をかける時は頭の方から。目線を上げてやると自然と舌も上がり、鼻呼吸ができるようになる。「目、鼻、口の順から耳、全身へと感覚機能が発達するので、目が発達すると鼻も発達する。大きなジェスチャーで呼びかけコミュニケーションを取ってみて」とアドバイスする。

口の中を指でマッサージも

口の中のマッサージもお勧めだ。清潔で密着した手袋などをして、人さし指で口の中を触ると、舌を絡めてきて鼻呼吸を始める。生まれた直後からでもできる。母乳を飲んだ後の口のケアにもなり、唾液が出ると免疫力アップにもなる。
鼻呼吸ができると上の前歯が、飲み込みがしっかりできると下の前歯がきれいに並ぶ。「いろいろなケアが、しっかりとした土台をつくり、全身の健康にもつながる」と岡藤さん。赤ちゃんが成長する間にどれだけのことをしてあげられるかが将来の歯並びに大切のようだ。
岡藤さんによる講座「知れば納得舌姿勢、その先にある健康と成長」は11日午前10時~11時半、松本市柔剣道場(中央4)1階で開く。参加費2千円。申し込みはこちらから。