安曇野出身アルパ奏者・上松美香さん 病気乗り越えミニハープで活動再開

「皆さん、ただいま!」
3月20日、安曇野市豊科公民館ホール。「ミニハープ」を奏でた同市穂高柏原出身の上松美香さん(43、東京)は、聴衆約450人に、明るい表情で呼びかけた。「奇跡のようですが、今日、私は久しぶりに右手の親指も使って演奏ができました」
上松さんは、中学生の時から南米のハープ「アルパ」を演奏。パラグアイ、メキシコなどでも活躍し、日本を代表するアルパ奏者といわれるようになった。
挫折を味わったのは10年前。右手の親指が動かなくなった。苦境の中でミニハープに出合った。アルパより小さく、指の負担が少ない。希望が見えた。3月20日は、その経緯を話す会で、演奏も数曲披露した。
5月末には、本格的な演奏会を市内のコンサートホールで開く。

「何とかリハビリで」と決意

上松美香さんがステージに立った3月20日の催しは、音楽イベントを企画するボランティア団体「MVSC」(神谷悟代表)が、安曇野市制20周年記念事業の一つとして開いた。
神谷さんは昨年9月、NHKラジオの番組「ラジオ深夜便」に上松さんが出演し、病気のことを話すのを聞いた。「最近は活動の情報が伝えられていなかったが、そういうことだったのか」。納得した神谷さんは、故郷・安曇野の人たちに、活動を休止した経緯や再開への道のりを話してほしいと、催しを企画。聞き手を立てて、対談形式にする方向で準備をした。

上松さんはアルパ奏者の母親に手ほどきを受け、中学生の時にはギター奏者の父、母と共に南米音楽を披露できるまでになっていた。アルパを究めようと、中学卒業後は東京に移住。15歳時にパラグアイ最大級の音楽祭で日本人初の特別賞を受賞し、17歳でプロデビューした。
2007年に信毎選賞受賞、13年には「安曇野市ふるさと観光大使」になった。毎年4月末に穂高川河畔で開かれる「早春賦まつり」ではアルパの音を響かせた。
16年、突然右手の親指に激痛が走り、動かなくなった。脳の機能障害からくる症状「局所性ジストニア」と診断された。演奏者には致命的な出来事だった。親指の代わりに、普段は使わない小指を使うなど工夫もしたが、状態は悪化。22年には右手全体が動かなくなった。
困難な脳の開頭手術を受ける選択肢もあったものの、上松さんは「何とかリハビリで」と決意。そんな中で出合ったのが、文字通り小さな「ミニハープ」だった。
「アルパは指はもちろん、体全体を使って表現する感じ。花で言えば大輪のヒマワリ。でも、ミニハープは野に咲く小さな花のようで、宝箱にお気に入りの音を詰めていく感じ」と上松さん。
体への負担が少ない分、何とか演奏ができ、ミニハープ演奏家として再びステージに立てるようになった。そんな時、MVSCから「安曇野で、今までの経緯を話し、何曲か弾いてみませんか」と打診を受けた。
イベント当日は、奇跡的に親指が動く良いハプニングがあった。友人や恩師との再会もうれしい出来事だった。
中学時代からの友人の竹内美樹さん(43、穂高柏原)は「当日、指が動いたことが何よりうれしかった」。穂高中学校校長だった丸山三郎さん(87、穂高有明)は「現在の姿が楽しみで来た」と笑顔を向けた。

復活の演奏会は5月30日午後2時、あづみ野コンサートホ―ル(穂高)で、MVSC主催で開かれる。「コーヒールンバ」「あの夏へ」(「千と千尋の神隠し」より)などに加え、自身作曲の「安曇野」などを弾く予定。弟子のアルパ奏者、河瀨あゆかさん(松本市)がゲスト出演する。一般5千円。前売り(4月14日まで)4500円、MVSC TEL080・5073・4764