【ビジネスの明日】#10 三和テクノ社長 エスラミ・セイエッド・レザさん

「良い仕事は裏切らない」実感

「義理人情、恩義を大切にするところは日本人との共通点。責任とプライド、情熱を持ってお客さまの役に立ちたい」と話すのは、塗装などを主力にした三和テクノ(松本市野溝東1)のエスラミ・セイエッド・レザ社長(51)。母国イランから来日して29年。一職人から創業した同社は6月に設立12年を迎える。
「体調の悪い父に代わり、大学を休んで半年くらい働こう」と、22歳の時に来日。川崎市などで建設関係の仕事をした後、友人がいる松本市へ。塗装会社で働いている時に日本人の妻と出会い、25歳で結婚した。
仕事を任されるまでになったが、会社は下請け、孫請けのため施主のためにならない施工も多く、葛藤を抱えた。異を唱えると「嫌なら辞めればいい」と一蹴された。それならばと、職人1人を雇い2003年に独立した。
腕には自信があった。しかし、顧客を開拓する飛び込み営業は苦戦した。5カ月ほどは全く仕事が取れず、妻も新聞配達などで家計を補った。仲間に仕事を回してもらいながら、やっと受注した工事を丁寧にこなすうちに口コミで評判が伝わり、「あの外人さんに頼みたい」と少しずつお客が増えた。「『良い仕事は裏切らない』ことを身をもって知った」
11年に佐久市、12年には軽井沢町に支店を開設。塗装や防水工事の他、リフォームも手掛ける。強みは塗装歴20年以上のベテラン職人を自社で抱え、段取りから仕上げまで一貫して担当すること。「元請けで中間マージンが発生しないので、お客さまに納得いただける質の高い仕事ができます」
10年間の無料アフターメンテナンスも売りで、お客からの問い合わせには迅速に対応する。「お客さまを不安にさせないことが何より大事。今日いただいた電話は、必ずその日に返す」と言う。
モットーは「安心、安全、スピーディー」。目標は県内にさらに複数の店舗を構えること。「地域に密着し、目が行き届く中で良い仕事をしていきたい」と前を見据える。

【プロフィル】
妻と子ども4人の6人家族。趣味はたまに大型自動二輪車に乗ること。日本語を根気よく教えてくれる妻には「感謝しても仕切れない」。松本市。