【像えとせとら】 ガマ侍(松本市大手3)

東京藝大・学園祭名物のみこし

「カエルの街」として知られる松本市の縄手通りの西側入り口に、用心棒のごとく鎮座する。2メートルを越す大きさと鬼気迫る表情が、観光客らを驚かせる。
元は2004年、東京藝術大の学園祭「藝祭」のために、デザイン科と作曲科の1年生が作ったみこしだった。同祭名物のパレードのコンテストに出るみこしは、竜や虎など力強いモチーフが多い中、あえて小さいカエルをかっこよく仕立てようと挑戦。
馬に見立てた茶色のカエルの上で、2匹の白い「ガマ侍(ざむらい)」が居合斬(ぎ)りする姿を、発泡スチロールを削り出して作った。作業は連日夜中まで続き、「本当に大変でした」と、当時の神輿(みこし)隊長でデザイナーの安井和子さん(37、千葉県)。
力作は2つの賞を受け、翌年、大学の地元の神田祭でも練り歩いた。だが、いずれ廃棄処分される運命。引き取ってくれる所はないかと、安井さんはカエルと縁がある土地を探して電話したが、どこも話すら聞いてくれずに門前払い。唯一、興味を示したのが、松本の商店街だった。電話を切った後、安井さんはうれしさのあまり涙したという。
学生OBらによる12年の大改修後は、ナワテ通り商業協同組合ができる限りの修繕を続けている。安井さんによると、みこしの最終案に残ったのはカエルとタコ。もしタコだったら、縄手にはなかっただろう。