【像えとせとら】「普選実現運動発祥の地」記念像 (松本市蟻ケ崎2)

先人たちの運動、現代に生きる

先人たちの運動、現代に生きる

松本市中央図書館の前庭に立つ4本の柱。素材は石だが、曲線を描き磨き上げられたフォルムが、柔らかさと温かみを醸し出す。白い柱を3本の黒い柱が囲み守っているようにも見える。
民主主義の基盤の一つである選挙権は現在、18歳以上の国民が「平等」に持つ権利だ。その基になった普通選挙運動は、山形村出身の中村太八郎、松本市出身の木下尚江らが1897(明治30)年、松本で普通選挙期成同盟会を結成し、全国に先駆けて始まった。
像は1995年1月、憲政史上に輝く運動の開始から、100年近くたったのを機に建てられた。作者は石彫家の伊藤博敏さん(63、同市中央3)。ゴッホの「糸杉」をモチーフに「曲がった形はボリューム感が出る。(運動が)到達点ではなく、さらに伸びていく力強さを出せないかと考えた」という。土台は「しっかり踏ん張る」意味を込め四角に。
4本の柱のうち、黒の3本は中村ら運動の中心だった3人と、「選挙人は20歳以上の男子」など運動の3大目標を表現。白の柱は、運動に参加した他の同志と女性参政権へのつながりを表す。
建立から26年。自作を「若さの強さも稚拙な部分もある」と評する伊藤さん。なくならない男女格差、世界各地での選挙を巡る混乱など最近の状況に「先人たちの運動(の精神)は、いまだ進行形」との思いを強くしている。