頑張らず手軽なカップ麺でも
キャンプブームの昨今、1人で静かな時間を過ごす「ソロキャンプ」人口も増えているらしい。一方で「1人で寂しくない?」「大変では?」などと考える人も多いのでは。アウトドア好きだがキャンプは長らくご無沙汰の記者が、女子ソロキャンパーのやまぐちきょうこさん(39、松本市)に弟子入りし、その楽しさを味わった。
知人から道具をもらったのをきっかけにソロキャンプにはまり、「月2回は行かずにはいられない」というやまぐちさんと、松本市内のキャンプ場へ。車から折り畳み式のカートで用具を運び、まずはテントを設営する。
やまぐちさんが使うのは一般的なドーム型でなく、二本のポールとペグで固定する六角形の「ティピーテント」。テントを広げ、金づちでペグを打つ。記者は高校の山岳部以来のペグ打ち。無心に打っていると、なんだかわくわくしてきた。
テント内にシートを敷かず、土足が“やまぐち流”だ。「靴を脱がず、自由に出入りできて楽」だという。高さが調節できる担架型の「コット」をベッド兼ソファ代わりにし、ホームセンターで買った取っ手を付けた棚に備品を入れ、カートはテーブルに早変わり。テントを閉め切る時は、一酸化炭素チェッカーも必須だ。
次は調理。バーナーやカセットコンロでもできるが、やまぐちさんは「火を見ていると癒やされる」と、たき火が基本。許可された場所で、持参のたき火台(組み立てると四角のバケツ状)を使う。炭は自然に返らないため、持ち帰るのがマナーという。
現代版の火打ち石「メタルマッチ」をこすり合わせると、あっという間に火がおきる。麻縄をほぐしたものや、ファットウッド(松ヤニがしみ込んだ木)で火勢を強め、拾ってきた松ぼっくりや小枝、持参した端材を燃やす。
湯を沸かし、携帯ミルでゆっくりとコーヒー豆をひく。なんともぜいたくな時間だ。香ばしい香りに身も心もほぐれる。スキレットで鶏肉を焼く、ジューという音が食欲を刺激する。室内より圧倒的に五感が開放され、喜んでいるのがわかる。
テント内に移って待望の食事。6種のスパイスを調合したというカレー、サラダ、安納芋の丸焼きは、ナイスバランスの絶品!「1人なので頑張らないことも大切」と、カップラーメンやフランクフルトを焼くだけ-も「全然アリ」なんだとか。
おなかが満ちたらコットに転がるも良し、たき火を眺めるも良し。思った以上に、あっという間に時間が過ぎていく。夜は読書や、好きな動画を眺めるもの楽しい。1人の自由きままさ、自然との一体感、オリジナリティーが出せるこだわりの道具や空間づくり-。記者もソロキャンプの魅力の“沼”に、ちょっと足を踏み入れたかも。
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記者がさまざまなアウトドアライフを体験し、その楽しさを紹介します。「像えとせとら」と交互に掲載します。
【女子ソロキャンプの心得】
(1)初心者は鍵がかかる車内で寝るのもお勧め
(2)車のスマートキーの電波を悪用してドアを開ける「リレーアタック」防止のため、キーをアルミ缶などに入れて保管する
(3)携帯電話の電波が届くところにテントを設営する―など。やまぐちさんも会員になっている「日本単独野営協会」(横浜市)は、ウェブサイトに「ソロキャンプ初心者Q&A」などを載せている。