新鮮な感動 毎回違う遊び楽しむ
コロナ禍で遠出が難しい中、家族連れのレジャーとして、近場での野外遊びが注目を集めている。一方で「子どもを自然の中で遊ばせてみたいが、どうしたらいいか分からない」「どんな遊びがあるの?」といった声も聞く。記者が、自然に慣れていない園児と小学1年生の子どもを連れ、地元で遊ぶネーチャーゲームを体験してみた。
松本市の野外活動団体「かまばの森で遊ぶ会」は、同市中山の古民家「喜源治」の小松弓子さんが所有する里山を借り、活動の拠点にしている。月1回、“森のプロ”を招いて木登りやブッシュクラフトなども学べる「かまばの森探検隊」を開き、4月25日は塩尻市のNPO法人「わおん」スタッフの牛山裕也さん(20)を講師に、2種類のネーチャーゲームを楽しんだ。
まずは、大人も子どもも草の上に寝転がる。「でっかい鳥が飛んだ!」「ティラノサウルスの声が聞こえた!」と楽しげな声が上がる。
最初のゲーム「フィールドビンゴ」は「おたから(宝)」「鳥のなき声」「みずのながれるおと」「はるのはじまり」など、探すものが書かれた紙を手に森の中を歩き回る。お宝って何だろう?大人もワクワクする。
リスがかじった木の実。松ぼっくりの赤ちゃん。虫食いの葉っぱだって、自分で見つければお宝だ。ビンゴカードに全部丸がついたら集まり、参加者同士で見つけたものを発表し合うのも、楽しい時間だった。
次のゲーム「森の美術館」は、画用紙で作った額縁で景色を切り取る遊び。空を見上げてみたり、足元の虫を探してみたり、森から出て遠くの松本市街地を眺めたり、友達の顔をのぞいたり。暗い森の中を切り取って、「みてみて、あそこだけ光っている!」と、木漏れ日に大はしゃぎする子どももいた。
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「かまばの森で遊ぶ会」代表の玉田尚子さん(40、同市筑摩)は以前、大町市で山村留学の指導員や自然体験活動の企画・運営をしていた。「(自身の)3人の子どもの遊び場と遊ぶ仲間が欲しくて」会を立ち上げ、自然にどっぷり漬かって遊べる環境をつくっている。
平日は、学校帰りの子どもたちの遊び場として「喜源治こども基地放課後ひろば」も開く。学年を超えて一緒に秘密基地を作ったり、タケノコを採ったりするなど、日暮れまで目いっぱい遊ぶ。
自然の中で遊ぶ魅力は「季節や天気、その場にいる仲間により、遊びが毎回違う。何もないのに、子どもは楽しく遊べる力がある」と玉田さん。
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ネーチャーゲームは簡単だ。しかし、それは野外で遊ぶ“入り口”に過ぎないことが分かった。自然に慣れていないと思ったわが家の子どもたちも、本当はそうした環境を与えられた経験が少ないだけだった。
森の中に入れば、落ち葉で足を滑らせながら坂を上ったり、ガサガサと動く茂みに驚きながら木の実を拾ったりと、自分たちなりの楽しみを見つけていた。森はちょっぴり怖いけれど、家の中では味わえない新鮮な感動にあふれている。興味の赴くままにぐんぐん進む子どもたちの足取りは、いつもより自信に満ちているようにも見えた。
【メモ】
かまばの森探検隊 今後の予定は▽5月22日=林業のプロに学ぶ木登り術▽6月12日=ブッシュクラフト入門(1)(ブルーシートのシェルター作りとロープワーク)▽7月18日=同(2)(マッチ一本の焚(た)き火術)。各回午前9時~午後3時。参加費1家族1000円+人数×500円(保険代込み、2歳未満無料)。「喜源治こども基地放課後ひろば」は月2回、平日午後3時40分~日没。小学生以上対象、1人500円(同、保護者参加は無料)。日程などは「かまばの森で遊ぶ会」のフェイスブックとインスタグラムに掲載している。