“愛”感じる作り静かに魅力発し
車を運転中、巨大な黒い物体が目に入った。シルエットにピンとくる。「ゴジラだ」
店先にいる高さ約4メートルの怪獣は、大小さまざまなタイヤを重ねて貼り合わせ、ゴツゴツした質感が力強さを醸す。丁寧な作りに“ゴジラ愛”を感じる。
店長の高砂晴彦さん(47)は、30年近く前に作ったと伝え聞いている。「いろんな種類のタイヤから、体の部位に合うものを選んでいる。“タイヤ愛”を感じます」。
愛情を注いだ人が残っていた。課長の牟礼貴章さん(56)。改めて話したことがないという当時のことを思い出してもらった。
きっかけは「店の象徴になるものをタイヤで作ろう」という発想だった。店員らで適当にタイヤを切って造作しているうちに、誰かが言った。「これ、ゴジラの頭みたい」。それで決まり、手探りで少しずつ、半年ほどかけて作り上げた。
完成すると話題になり、店のイメージカラーの赤で塗り上げ、電球で目を光らせたこともあった。やがて顧みられず、長年、風雨に打たれるままに。それでも威容が衰えないのは、さすが日本を代表する怪獣と言うべきか。
並んでいる銀色のもう1体は、息子のミニラだという。「初めてのお客さまでも『ゴジラの店』と言えば分かってもらえます」と高砂店長。写真だけ撮っていく人もいるなど、静かに魅力を発し続けている。