【野遊びのススメ】#23「ネイチャースキー」に挑戦

やってみないと、分からないという。森の中で走りも滑降も楽しむ「ネイチャースキー」。ゲレンデのベテランがばたつくかと思えば、初心者が難なくこなすこともあるとか。不可思議さに引かれ、春めく里を背に冬山を目指した。

経験不問 不安定さが楽しい

2月最後の日曜、27日の乗鞍高原は大雪だった。この天候で、初心者でも楽しめる?
「全然、大丈夫です」。明快に答えてくれたのは、レジャー会社リトルピークス(松本市安曇)の笠松学さん(46)。スノーシューを体験したいという申し出に、ネイチャースキーを逆提案してくれた人だ。「移動自体が遊びなので、天候が悪くてもいいし、何回やっても楽しい」という。
装いは、素人目にはクロスカントリーだ。実際は、板が太くてエッジが付き、クロカンより滑りやすい。スノーシューより速く歩けるという。いいことずくめに聞こえるが…。
この日は、初心者向けのツアーに参加した。同社のガイド、もあ(本名・福谷愛子)さん(38)が指導役だ。
まずは平地の移動。「両足を平行にそろえて」。テレビで見るクロカンのイメージだ。すいすい行けた。ちょっとした上り坂も、そのまま行ける。秘密は板の裏のうろこ(滑り止め)だ。胸を張って板を雪面に押しつけ、うろこを効かせる。前傾姿勢はかえって禁物だ。コツを覚えれば新鮮で、さらにすいすい。「歩くのは合格。完璧!」。もあさん、褒め上手だ。
次は斜面。基本、直滑降だ。「膝を柔らかく。重心を真ん中に」。体の軸をぶらさず、重力に任せて滑り降りるだけだが、意外と難しい。ごく緩い斜面なのに、バランスを崩して転ぶ。
すかさず、もあさんから「ナイス、ナーイス!」と明るい声。これが素直に受け取れた。雪に突っ込む爽快感があった。初心者だから失敗も何のその。斜面は緩く、けがの心配はほとんどない。
エッジ付きの板は、そもそも不安定という。合格したはずの歩行でも、ちょっとした弾みで転ぶ。「不安定さを楽しむスキーです。何でもない斜面も面白い」。もあさんの言葉に納得した。
上達すると、木々の間を自在に走り、滑り抜けられる。この日は歩き、滑り、そして転んでふかふかの新雪にまみれた。大雪でよかった。

【ネイチャースキー】
「BC(バックカントリー)クロカン」とも言う。革製の柔らかいブーツをつま先だけ板に固定。ゲレンデスキーより軽く、平地から急斜面まで自然の地形を楽しむ。シーズンは3月いっぱい。リトルピークス(TEL0263・93・1243)は乗鞍高原と上高地でツアー(参加費は半日5100円、1日9200円)を開催。道具レンタルは一式1日3000円。栂池高原や北信地域では、東京・木風舎(TEL03・3398・2666)のツアーがある。