【眺めてみれば】#15 旧務台酒造店(安曇野市三郷温)

風景に溶け込む大正初期の建物

温郵便局の北約200メートルに位置する「旧務台酒造店」。田園に囲まれた中、山をバックにすっと空に伸びる煙突、白壁の大きな建物が印象的だ。
明治初頭に創業。1961(昭和36)年に亀屋酒造店、飯野屋と合併し、日本酒「酔園」が誕生した。現在はその歴史と伝統を、EH酒造(豊科高家)が受け継ぐ。
約4000平方メートルの敷地には、瓶詰め所として使われた白壁と板張りの土蔵や貯蔵庫など、大正初期の建物がほぼそのまま残る。当主の務台文猛(ふみたけ)さん(81)は「建物などの維持はお金がかかる」としながらも、祖父九栄次(くえいじ)さんの代から受け継いできた宝を守り続けている。
屋敷林も残り、安曇野の原風景の一つともいえる同酒造店。「壊すのは簡単だが、二度と造れないものばかり」と務台さん。残す方法を模索している。