【小林千寿・碁縁旅人】#44 スイスと温暖化

凍ったレマン湖かいわい(2005年1月18日)

近年温暖化が指摘される中、スイスの氷河は2022年に全体積の6%以上が失われ、過去最悪だったそうです。1931~2016年の間に氷河は半減し、もしこのまま温室効果ガスの排出量が増え続ければ、アルプスの氷河は2100年までに現在の氷塊量の80%を失うそうです。
それと関連しているのでしょうか。今年はスイスをはじめとする欧州の山々に雪が少なく、スキーヤーたちが困っています。
私も1974年と2006年にグリンデルワルトからユングフラウへ登った時に、氷河、雪の減り具合に驚きました。
私がジュネーブに暮らした2005~07年の冬に1度だけ、ジュラ山脈からの寒気がジュネーブに下ってレマン湖の水を揺さぶり、跳ねた水が一瞬にして凍るのを見たことがありました。朝方、湖畔の道を車で通ると、止めてあった車も氷で閉ざされ、近づけません。夕方、同じ道を行くと氷は大分解けており、足元に気をつけながら写真を撮りました。大自然の威力を垣間見た気がしました。
スイスは、長野県のように山々に囲まれた風光明媚(めいび)な国です。余談ですが、歴史的に大国に囲まれ、寒い国ですから農作物には恵まれず、収入を得るために14~19世紀には傭兵(ようへい)で収入を得てました。その名残で、今でもバチカン市国は「ローマ法王のための警察任務」としてスイス傭兵が認められています。
ところで、地球温暖化の影響を受けて雪山を観光資源としている国々は今後、どうなるのでしょうか?解けた氷河、雪は、どこに行くのでしょうか?
長野県内の100年あたりの年平均気温の推移で、松本市は2度高く、上昇率が著しいというデータがあります。
私が子どもの頃の冬は屋根に氷柱(つらら)ができ、寒かったです。温暖化で暮らしやすくなった面もありますが、地球の自然環境の大変化が表面化しつつあり、私たちの生活に大きな課題を突きつけています。