牛伏寺の境内に現れた氷柱観音像(松本市内田) 

身を清める手水鉢からこぼれ落ちた水が凍結しできた、氷柱観音の群像=ニコンD5、ニコンED AF-S ニッコール28―70ミリ

手水鉢の下に3体の観音様 

信州随一の厄よけ観音として、県内外に知られる松本市内田の牛(ご)伏寺(ふくじ)。縁日大祭の1月8日、訪れた境内で、参拝前に身を清める手(ちょう)水鉢(ずばち)の下部にできた「氷柱(ひょうちゅう)観音」の群像に出合った。
氷塊のように見えたが、近づいてびっくり。目をくぎ付けにしたのは、中央に正面を向いた観音様の立ち姿だ。高さ約40センチ。顔の表情や、右肩から折り曲げた右腕の雰囲気も伝わってくる。顔の鮮明さに欠けるが、その右側にもう一体。中央下のタケノコに似た氷(ひょう)筍(じゅん)に目線を移した瞬間、その右側に正装姿の「帽子」をかぶった左向きのリアルな姿が。本尊の十一面観世音菩薩(ぼさつ)の化身かと心が震えた。手を合わせ、氷柱観音の群像に、今年の無事を祈った。
鉢伏山の山懐の牛伏寺は、信濃三十三番観音の第27番札所。唐の玄宗皇帝に命じられ大般若経600巻を善光寺に奉納途中、経文を積んだ2頭の牛がこの地で倒れ葬ったのが牛伏寺の由来とされる。
昨年12月中旬、新たに製作した閻魔(えんま)王像が加わり、20体の木像で仏教の地獄の世界を表現した「地獄めぐりの回廊」が20年ぶりに公開されている。「おっかねえもの見た」子供の頃の恐怖の記憶がよみがえってきた。
(丸山祥司)