【記者兼農家のUターンto農】#107 リーフの品種

病気が激減絶大な効果

収穫するリーフレタスの株は、初めに根元を切り、ひっくり返して畑の上に置く。たまに、茎の内部が茶色くなって腐っているものを見つける。残念。出荷できない株だ。
雨が続いた後に目立ってくる気がする。
「根腐れ病だ」と父は言う。きちんと診断を受けたわけではないが、調べると、似たような症状ではある。
土壌の中にいる、ある種の菌が悪さをするという。作物の根っこから侵入し、内部から傷めてしまう。
どうしたら防げるのか。一つには、同じ作物を続けて作ること(連作)を避け、別の植物を間に挟むのがいいという。
それなら、父は何シーズンも前からソルゴー(ソルガム)というイネ科の作物をリーフの間に作ってきた。土壌中の窒素を有効利用する緑肥としての役割が主だが、病気を抑える効果も大きい。
それでも、毎年のように発生する。やっぱり切り札は農薬なんだろうか。
「品種が一番だな」と父は言う。以前、病気の大量発生に悩まされたが、病気になりにくい品種の導入で激減した。完全に抑えられなくても、農薬の経費や手間がだいぶ減らせて、経営的に見合う。種苗会社さまさまだ。
病気対策は一例だが、たくさんの品種がリーフにもあることを、Uターンするまで意識しなかった。他の作物についても同じ。違いを認識していたのは、ジャガイモやトマト、ブドウくらいだ。
実はリーフでも、品種によって味わいや食感が違ってくる。ただ、微妙だし、生産者も消費者もあまり気にしていない。
品種が話題になると言えば、米がある。百花繚乱(りょうらん)、行政も巻き込んでブランド品種をアピールする米を引き合いに出すのは無理があるが、同じ食材でも彼我の違いはあまりに大きい。
信州が生産量日本一を誇るレタス類。栽培技術は発達しているけれど、食文化にまでは成熟していない。品種を意識するようになって、そんなことを思った。