【ブドウ畑に吹く風~記者のワイン造り体験記】#9 房整理と除葉

“本命”のみ残す 近づく収穫

なかなか暑さが衰えない夏。しかし、ブドウ畑の葉は美しい黄色へと移ろい、黒ブドウの粒も深い漆黒色の宝石のように輝いてきた。収穫の秋は着実に近づいている。
松本市笹賀のガクファーム&ワイナリーでは、より良い実りの秋を迎えるため、ブドウの房の整理と除葉が行われていた。
この日世話をしたのは、赤ワイン用品種のカベルネ・フラン。左右に伸ばした枝から、計10本の新梢(しんしょう)が立ち上がる。最終的に残すブドウの房は、各新梢に二つだ。
房の整理には、多く付いた房を減らす「摘(てき)房(ぼう)」、房の肩にある余分な花穂を切り落とす「肩落とし」、枝やワイヤ、互いに絡まった房をほぐして下げる「房下ろし」がある。そして、房の周りに茂る葉を落とすのが「除葉」だ。どちらも房にしっかりと太陽光を当て、風通しを良くして病気を防ぎ、収穫時に房を扱いやすくするための作業だ。
特に、カベルネ・ソーヴィニヨンを筆頭とするカベルネ系は、実が完熟しないうちに発酵させると、ピーマンのような青くさい香りが出るという。「しっかり完熟させるためにも、早くから太陽光に当てたいんです」とオーナーの古林利明さんが教えてくれた。
古林さんと一緒に、タイヤが付いた移動式の台車に座ってブドウの木に向かう。下部には、長さ10~15センチ近い房が並ぶ。
房は基本、最下部の二つを残し上部はカット。房が自然にぶらんと下がる形にする。葉は手でぽきっと折る。とはいえ、どの新梢や房も形がさまざまで、中には横の房と絡み合うものもあり、迷う。
以前、生食用ブドウの世話の経験はあるので、割と早くにイメージはつかめた。余分な房を落とし葉を取り除くと込み入っていた新梢が適度に空き、風通しも良くなりすっきり。ワイン原料となる“本命”の房だけが残り、いよいよこれらがワインになるのかという実感も湧いてきた。
基本的には、光が当たるほどブドウの糖度は上がる。白ワイン用の品種シャルドネについては、古林さんが「今年は酸が立った味にしたい」との思いから、除葉せず光をあまり当てない予定とか。
品種や造りたいワインの味のイメージに合わせ、手入れも変わってくるとは、新たな発見だった。