松川地域おこし協力隊の西村さん人と人をつなぎ村の課題解決へ

誰かの「やりたいこと」を応援

少子高齢化、お年寄りの独り暮らし、子育て中の母親の孤立─。松川村の地域おこし協力隊員、西村耕平さん(35)は、「つなぐ」をキーワードに、地域の課題を解決しようと奮闘する。
薬剤師で、治験などをする安定した仕事に就いていたが、「ワクワクすることがしたい」と松川村に移住した。
一昨年12月には一般社団法人「Ori絲」を設立。高齢者の困り事を解消し、子育て世代とつなげる有償ボランティア「まごサポ」に取り組む。昨年10月には、役場近くの平屋を購入。将来はシェアキッチン、ヨガのレッスンなどのためのチャレンジスペースを作りたい考えだ。子どもを対象にした自然学校にも取り組む。辰年生まれの年男。昇り竜のように村を盛り上げる。

薬剤師を辞め松川村に移住

「人生1ミリも後悔がない」。西村耕平さんの亡くなった母方の祖父、山口並木さんの言葉だ。西村さんは東京にいた頃、薬剤師として医薬品の開発や治験の仕事をしていたが、ただ淡々と仕事を処理する毎日だった。
キャンプやハイキングが好きで、自然の中で暮らし、山を見たり、登ったり。そんな生活に憧れた。「自分がやりたいことをして楽しく生きたい。移住定住の仕事をしたい」と2021年4月、地域おこし協力隊員として松川村に赴任した。
「好きなことを誰かに伝える時、ワクワクする」と西村さん。移住相談で、同村の魅力を伝え続け、これまでに「西村さんがいるから」と2家族が移住したと、うれしそうに話す。

団体を設立し活動を本格化

活動する中、「電球交換ができない」「重い物が持てない」「草取りが大変」といった高齢者の声を耳にした。核家族化が進み、子育て中の母親が孤立する悩みもある。両者をつなぐ手段を模索、一昨年12月、一般社団法人「Ori絲」を設立した。お年寄りの困り事を子育て世代が解決する有償ボランティア「まごサポ」をスタート、昨年4月、活動を本格化した。
有償にしたのは、お金を稼ぐことで、母親が社会とつながる機会をプレゼントできると考えたからだ。子育ての先輩、おばあちゃんに知恵をもらい、悩みを話す機会にもなる。高齢者にとっても、孫子世代と関わることで元気がもらえるメリットがある。
昨年秋には、空き家対策にもなると、役場近くの築40年の平屋(延べ床面積73平方メートル)を購入。できるところは自力でリノベーションし、飲食店を開きたい人が試験的に店を出せるシェアキッチンをオープンする計画だ。ヨガなどのレッスンにも使えるスペースも設ける。「飲食店が増えたら、地域全体が盛り上がるのではないか」
仕事をする母親から「お総菜を販売する店があればうれしい」といった声を受け、村の生活改善グループの女性に、村の野菜などを使った料理を提供してもらうシニアチャレンジも考えている。アウトドア体験の少ない移住家族の子どもらに、村や自然を好きになってもらおうと、松川村内の馬羅尾(ばろお)高原キャンプ場で小学4~6年を対象にした自然学校も開催と、異世代をつないだり、自然と人が触れ合う機会を提供したりしている。
好きな場所での定住に加え、なりわいを探そうと地域おこし協力隊員になったという西村さん。自分と同じように、好きなことをして生きる人を増やしたいというのが夢だ。今、やりたいことができる幸せを実感していると言い、「10年後も20年後も誰かのやりたいことを応援し続けていると思う」と、大好きな北アルプス見上げる。