【ガンズリポート】強化担当パウリーニョさん サポーターへの思い強く 「クラブを愛する選手探したい」

松本山雅FCで通算6季プレーし、昨季限りで現役を引退したパウリーニョさん(35)が、山雅の強化担当として活動を始めた。母国ブラジルでの選手発掘に力を入れる傍ら、随時来日して練習のサポート役もこなす。山雅に携わり続けることの根底にあるのは、サポーターへの思いだ。

共に歌う「勝利の街」

ホーム開幕戦だった9日のYS横浜戦後、引退セレモニーが開かれ、パウリーニョさんは原稿を手に日本語であいさつした。「私と同じようにクラブを愛する選手を探したい」と語り、最後に凱歌(がいか)「勝利の街」を歌いたいと呼びかけた。観客席に向かって歌い始めると、呼応して歌声が起こり、太鼓が鳴り出した。
「すごく感動した」。後日、パウリーニョさんは笑みを浮かべた。サポーターと一緒に歌うプランは、以前から考えていたという。「勝利の街」は、初めて参加した2017年の新体制発表会で強く印象づけられたという。「家でも歌い、子どもも歌えるようになった」
山雅への加入は、その前年のシーズン途中。現役時代の思い出として、この年のリーグ戦最終節を真っ先に挙げた。理由はやはりサポーターの声。J1昇格プレーオフ進出を決める逆転勝ちで「耳が痛くなるくらいの声援が忘れられない」。
山雅が2度目のJ1を戦った19年までプレーし、J2岡山での2季を挟んで、22年に再び山雅へ。「山雅で引退したい」と思うようになっていたという。Jリーグで14季、計6クラブでプレーし、「一番の特徴はサポーター」という山雅を選んだ。
昨季、選手として100%の力を出せないと自覚し、「ピッチ外の方が総合的にサポートできる」と引退後もクラブに関わることを考えた。
引退セレモニーでは観客に「霜田正浩監督をサポートしてください」とも呼びかけた。取材で理由を尋ねられ、「今の状況はよくない。J3の3年目でピリピリしている。みんなと一緒に乗り越えたい」と思いを明かした。
自身の役割は若手の発掘が主になる。出身地のブラジル南部を拠点に「生の試合を見て、じかに話をし、合う選手を連れてくる」と意気込む。選手として1年プレーした、霜田監督のスタイルに合うことも基準にする。
ただ、強調したのは能力より規律とハングリー精神。自身の経験を生かし、「日本に慣れそうな性格のブラジル人を見極める」。
加えて「年俸の安さ」も挙げた。「スポンサーやサポーター、いろんな人がクラブにお金を出してくれる。それに値する選手を見つけたい」。サポーターの期待を胸に、それに応える働きをピッチの外でも続ける。