小谷の猫つぐら職人 木村敏子さん ワークショップ開く工房開設 作る楽しさ共有し自分も勉強

小谷村中土の木村敏子さん(65)は、稲わらで編んだ猫の寝床「猫つぐら」の職人。根気が要る緻密なこの手仕事を誰よりも楽しみ、材料の稲わら栽培にもこだわりを持つ、熱意あふれる作り手の一人だ。今春、猫つぐらをはじめとするわら細工のワークショップ(WS)も開く工房を自宅近くに開設。「多くの人と楽しさを共有したい」と張り切っている。
木村さんは、4人の子どもが同村に山村留学していた縁もあり、十数年前に愛知県から移住。清水山集落の古民家を改修し、夫と暮らしている。
猫つぐら作りは、雪深い小谷村の、冬場の手仕事として伝わるが、近年は作り手が減少している。
わらの選別に始まり、円形の底面を編んだ後に、上部へと壁面を編み上げていく。この工程の全てが手作業で、慣れた職人でも完成までは2週間ほどを費やすという。
わら細工初心者だった木村さんは、村が2017年から開いた職人養成講座に参加。手間のかかるこの作業を体験すると、「やり始めたら面白くて、はまった」。
稲わらをどうやって編んで締めているのかを理解し、こつこつと手を動かして形に仕上げる。そうして完成させた時の達成感と、何度作っても同じものにならない難しさに、さらに作る意欲がかきたてられた。
すっかりのめり込み、自宅でも練習に没頭。村から職人認定を受けて村のふるさと納税返礼品を手がける一人になった。
昔から、手に職を持つことに憧れた。編み方の研究に加え、材料の稲わらにも興味を広げた。節間が長く、しなやかで編みやすい、猫つぐら作りに適した古代米のもち米があると知った。集落内の休耕田を借り、開墾もして、わら細工用の稲わらの栽培を徐々に増やしている。

木村さんは、数年前から村内で、わら細工のWSを開始。2024年から猫つぐら作りのWSを開くと、塩尻市などから、片道2時間近くかけて参加する人もいた。また、このWS参加をきっかけに技を磨き、村の職人認定を受けた人が複数出ているという。
これまでWSは、近くの公共施設を借りて開催していたが、会場へ材料や道具を運ぶ手間や、開催日時の制約などがあった。今春から、同じ集落内にある、かつて顔なじみが暮らした空き家を購入し、わらの保管と主にWSを開く工房として、本格的に活用を始める。工房の名前は、この家の屋号「柴原中」と「わら細工」にちなみ「しば藁工房」とした。3月下旬からは、人気の猫つぐらWSを予定する。
「感覚でやっていた部分も、教えるためには、明確にする必要がある。人に教えることは、自分の勉強」と木村さん。「作る楽しさを共有しながら自身のレパートリーも増やしたい」
雪深い小谷にも、徐々に近づく春の気配。この工房での新たな出会いを心待ちにしている。

【猫つぐら作りワークショップ】
3月21、28日、4月11、25日、5月9、23日の全6回。午前10時~午後3時、小谷村中土の「しば藁工房」。農薬不使用の自家栽培の稲わらを使用。受講料1回3500円(稲わら代込み)。完成までの参加回数には個人差があり、1個作るのにかかる費用は2万円前後。作業に使う針は500円で購入できる(貸し出しあり)。はさみ、洗濯ばさみ、霧吹き(ある人)、昼食(必要な人)を持参。先着10人。問い合わせは木村さんTEL090・7028・1714(ショートメッセージでも可)