【像えとせとら】深志神社神牛像(松本市深志3)

学問の神様、菅原道真を祭る深志神社には、これまで幾度となく足を運んだが、この木像の存在を知らなかった。今年のえとにちなみ、牛の話題を探しに訪れた際、参道にある石の臥牛像を見ていると、背後が妙に気になった。振り返ると、恵比寿殿の右隣に小さな建物が見え、近づくと貫禄ある臥牛が。呼ばれたのかな?

年輪くっきり貫禄ある臥牛

1899(明治32)年、道真の没後1000年に合わせて営まれた「御正忌一千年祭」の折、氏子町会の一つである博労町が奉納した。地元の立川流彫刻師で、旧開智学校の玄関彫刻の制作か補修に携わったとされる原田蒼渓(そうけい)が彫ったという。
おそらく1本の材から彫り出しており、くっきりと現れた年輪が、120年の時の流れを感じさせる。角は、種類は分からないが、本物の牛の角を付けてある。何かの折に火に当たったか、顔から首にかけて少し焦げたところがある。
「目につきにくい場所にあるが、芸術作品と言えるもの。神社自慢の像です」と話す禰宜(ねぎ)の小林義幸さんは「2021年はスポットライトを当てたいね」とも。
「此(この)梅に牛も初音と鳴きつべし」とは松尾芭蕉の名句。今年の春は境内の梅を眺めながら、耳を澄ませてはどうだろう。神牛の鳴き声が、心に聞こえてくるかもしれない。