【像えとせとら】西公園の子ダコ(大町市大町)

海から遠くで山の子ら育む

遊具広場にある独特な形をした滑り台「タコの山」は、通称「タコ公園」のシンボル的な存在。その正面に、目の周りと口を真っ赤に塗り、鉢巻きを締めた小さなタコがいる。ちょこんと立つ姿は愛嬌(あいきょう)たっぷりだ。
公園を管理する市建設課に尋ねると、名称は「子ダコ」。タコの山と“親子”という設定らしい。ともにコンクリート製で、設置されたのは1971(昭和46)年ごろとみられる。子ダコはスツール(いす)の部類とされ、親子とも定期的に安全点検を受けている。
平日の昼下がりに、タコの親子を観察してみた。広場を訪れる子どもは、ほとんどが滑り台で遊ぶものの、子ダコには目もくれない。そのうち少数ではあるが、年長園児や低学年らしい児童が、跳び箱のようにして遊びだした。子どもを見守る母親が腰掛ける姿も。なるほど、65センチほどでちょうどいい高さだ。
子ダコに乗って遊んでいた同市平の服部こころさん(7)は「手(足)がかわいい」。父の翔一さん(34)も幼少時から親しんだといい、「高校生になっても座って友達と話したり、頭に乗ってバランスを取ったりして遊んだ。孫の代まで残ってくれたら」。
海から遠く離れた地で、半世紀にわたり子どもらを見守り育んできたタコの親子。園内の親水施設で遊ぶ子どもらの声に交じり、「水遊びしたいなあ」というつぶやきが、今年も聞こえてきそうだ。