【小林千寿・碁縁旅人】#10 国際囲碁セミナー・京都編

「そうめん修行」に臨む世界の囲碁の生徒たち

日本文化の中で学ぶ碁

26、27日に囲碁の3大タイトルの一つ「名人戦・七番勝負」の第1局が打たれ、井山裕太・名人(32歳)への一力遼・九段(24歳)の挑戦が始まりました。そして何と、その翌々日の29日に一力碁聖と挑戦者の井山名人による、タイトルが決まる5局目が打たれる緊迫した日程です。
日本棋院は海外の囲碁ファンのために名人戦の開催に合わせ、「国際囲碁セミナー」を開催していましたが、コロナ禍で残念ながら昨年に続き中止です。
2017年は主催の朝日新聞社の大阪・中之島フェスティバルタワー披露に合わせ、名人戦1局目が特別に大阪で打たれ、それに合わせて囲碁セミナーも大阪、京都で開催。そこで世界の囲碁ファンに日本文化に浸りながら囲碁を学ぶ企画を用意しました。
日頃、ご指導いただいている京都・相国寺の坐禅(ざぜん)道場・大通院の小林玄徳老大師の計らいで、日頃はできない貴重な経験をさせていただきました。
まず相国寺内の法堂(はっとう)の天井の狩野光信作の「龍」を見学。龍の下で手を叩(たた)くと音が反響する「鳴き龍」です。晩夏でもまだ暑く、セミの鳴き声の中、広い境内を歩き、その中の塔頭(たっちゅう)の一つ大通院へ。
広い畳の部屋で諸外国から集まった囲碁の生徒は慣れない正座にトライ。老師の法話を拝聴し、その後は脚付きの碁盤で碁を打つ。正座に痺(しび)れを切らし足を崩しながらも、碁に没頭する姿。
そして坐禅堂で坐禅。広く薄暗い坐禅堂の四方の窓を開けると暑さが消え、セミの鳴き声が聞き分けられるほどの静けさ-。
昼は雲水さんたちと「そうめん供養」。ひたすら、そうめんを食べ続ける修行です。そして修行後に相国寺の塔頭の一つである、夕日に輝く金閣寺を見学しました。
このコロナ禍で自由に行き来できなくなった今、その時が如何(いか)に貴重な時間であったか気づかされます。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)