【小林千寿・碁縁旅人】#17 クリスマスの飾り付け

碁盤のケーキ

今は街中がクリスマスの飾り、イルミネーションで賑にぎやかです。日本は宗教には関係なくいろいろな国の行事を取り入れ、「お祭り」にするおおらかな国です。
とはいえ、海外から見ると、生活の基盤ともいえる宗教なしの「お祭り」は異様でもあります。
でも日本アニメから始まったコスプレとハロウィーンが合体した“お祭り”は、今や世界の若者たちの憧れになり不思議な融合力があります。
さて、ある年の12月25日の24時すぎ、東京・銀座を外国の囲碁の生徒たちと歩き回ったことがあります。ウインドーに飾られた煌(きら)びやかなクリスマスの飾り付けがどんどん外され、門松や凧(たこ)の新年の飾り付けに瞬く間に替わる様子を見るためです。
欧米では飾り付けを外すのは1月6日すぎの週末明け、ロシアはロシア正教のクリスマスが1月7日なので21日ごろまで飾られていますから、日本の12月25日深夜の入れ替えは特別な光景です。
日本は、子どもたちにとってクリスマスは美味(おい)しいご馳(ち)走(そう)、ケーキ、プレゼントを貰(もら)え、新年は門松、神社でお参りをして心新たにして、御節(おせち)料理にお年玉と素晴らしい国です。
さてケーキといえば、最初に「碁盤ケーキ」を食べたのは、ハンガリー・ブタペストで開催された1986年夏の欧州選手権戦の閉会式でした。手作りの素朴なケーキでしたが、アイデアに感激。それから、「いつか『碁盤ケーキ』を日本でも」と願っていたのですが、恒例の東京のホテル・ニューオータニの忘年囲碁会に2007年に子どもの参加数が増えたのを機に、繁忙期のホテルに無理にお願いしました。
最初の数年は白い四角いケーキにチョコレートで碁盤の線が引かれ、イチゴの飾り付けでした。そして遂(つい)に私の念願の「正倉院の碁盤」のイメージでお願いしてみました。聖武天皇もお気に召すかと思われる見事なクリスマスケーキ。皆さんもぜひトライしてみてください!(日本棋院・棋士六段、松本市出身)