【ビジネスの明日】#32 ジュネス社長 山本篤司さん

「常にお客さん目線で商品を提供しないと、選んでもらえない。それは今も同じ」。こう語るのは保険代理業、ジュネス(松本市城西)の山本篤司社長(46)だ。縁もゆかりもない松本で独立して今年で19年目。初心はぶれていない。

事故処理など迅速で細やかに

損害保険と生命保険を扱い、その割合は9対1。損保の中で主力は自動車保険で6割を占め、残りは火災保険と、労災や賠償保険など企業関連の保険が各2割という構成。
ネット保険などが台頭する中、自動車保険は、事故処理などでの迅速で、きめ細やかなサービスを売りとし、企業関連の保険では損害保険会社の社員時代に得た専門知識を強みとする。
「事故処理はお客さんにとって一番煩わしいこと。そこをきちんとすることが、どこを選んでもらうかの決め手になる」と強調。「家族や仲間内で、車の話が出たとき、自分の顔を思い出してもらえたら」とする。
一方、代理店の統合も加速しており、個店として生き残るためには取扱高を増やすことは不可欠。「契約を取ることだけを考えれば、そこに注力できるが、何かあったときのサービスの質だけは落としたくない。そこが問題です」と葛藤する。

大学卒業後、安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)に入社。1年間の本社勤務を経て、最初に赴任したのが松本支店だった。
代理店を管理する業務などを担当。年数がたつごとに感じたのが「保険の本当の価値を発揮するには自分が代理店になること」。28歳で会社を退職。松本で代理店として独立した。「当時、代理店になることを誰もいいとは言ってくれなかった」と振り返る。
独立と同時に「人脈を増やしたかった」と、松本JC(青年会議所)に入会。結婚もし、子どももできた。自身の代理店の経営も軌道に乗る前で「金銭的に本当に苦しかった」と、アルバイトもした。
そうした状況でもJCの活動には積極的に参加。「JCの名刺があれば普段は会えない人とも会える」ことが分かり、本業のために自分の顔を売る一方、JC会員としてイベントなども企画。2013年には松本JCの理事長も務めた。
現在、ジュネスの社員は自身を除いて4人。全員が20、30代だ。「保険の仕事もJCの活動も、人や街の将来を見据えるという点で一緒。ここにいる社員がそれを分かってくれれば会社は伸びる」と期待する。

【プロフィル】やまもと・あつし  1975年、岐阜県出身。明治大学商学部卒業後、安田火災海上保険に入社。2003年、ジュネスを設立し社長就任。安曇野市豊科南穂高在住。