【野遊びのススメ】#29 渓流釣り

自然の中魚と向き合う

晩春から初夏にかけてがベストシーズンと聞く「渓流釣り」。一度も竿(さお)を手にしたことはないが、前から興味はあった。この機会にと5月末、3年前から休日はもっぱら渓流釣りを楽しんでいるという「ザ・ノース・フェイス松本店」(松本市中央2)スタッフの伊藤芳規さん(41、同市)に同行させてもらい体験した。

体長約20センチイワナ釣り上げ歓声

この日、伊藤さんが選んだポイントは梓川の支流。天気予報は雨だったが晴れた。釣具店で遊漁券(日釣券1100円)と魚の餌となるブドウ虫を購入して向かった。
車を止め、道具を持って未舗装の道や川の中を歩く。浮き石や斜面、足が滑りやすいぬれ落ち葉もあり、すたすたと進む伊藤さんの後を必死で付いて行く。
到着した釣り場は、光にきらめく水面、新緑の木々、鳥のさえずりなど自然そのもの。借りた道具で、イワナ釣りの定番という「餌釣り」と「テンカラ(毛針)釣り」に挑戦する。
餌釣りは、リールがない4.5メートルほど延びる「延べ竿」を使う。同じくらいの長さの糸を張り、おもり、針を付け、ブドウ虫を付けて川に流す。ところが針に虫を付ける時に出る体液のようなものにどうしても耐えられず…。毎回伊藤さんに頼んで付けてもらった(ごめんなさい)。
「今の時季は流れが速い所より緩い所が狙い目」「イワナは石の影に隠れて餌を待っている」「イワナの目は上にあるから身を隠して」などのアドバイスを受けてスタート。川に向かって竿を振ると、いきなり木の枝に糸が絡まり泣きそうになる。
ようやく糸を外し、今度は慎重に糸を垂らすが全く釣れない。「餌が不自然だと魚が警戒してしまう」と伊藤さん。記者がもたもたしている間に3匹も釣り上げていた。
川の流れに任せて餌を流していると、突然下に引っ張られる手応えを感じた。「もしかして」と期待しながら引っ張り上げると、体長約20センチほどのイワナがかかっている!あまりのうれしさに歓声を上げると「シー」と伊藤さん。「他の魚がびっくりして逃げちゃうよ」
その後も餌だけもっていかれたり、引き上げるタイミングが早くて逃げられたりしたが、計5匹ほど釣れた。テンカラも試したが、すべて餌釣りだ。でも、どれも小さかったため伊藤さんが言う通り、川に放した。
「どうやったら釣れるんだろう」と考え、試行錯誤しているうちに5時間がたっていた。自然の中で魚と向き合っていると無心になれる。釣りファンが夢中になる気持ちが少し分かった。