【記者兼農家のUターンto農】#61 品質

バラバラな見た目、許せますか

前々回のこの欄で、サッカー松本山雅FCが遊休農地を利用して青色大豆「あやみどり」の栽培に取り組んでいることを紹介した。そのあやみどりを使った豆ご飯が商品化された。正確には、豆ご飯をメインにした弁当ができた。
作ったのは、山雅公式スポンサーのアルピコホールディングス(HD、松本市井川城2)と、その子会社であるスーパーのデリシア(同市今井)。アルピコグループの若手でつくる「イノベーション研究会」が、山雅とのコラボ商品を模索する中であやみどりの栽培プロジェクトを知り、「応援弁当」の企画が浮上したという。
実現までの課題に大豆の加工があった。山雅から手に入るのは、乾燥状態のもの。それを調理できるまでにするノウハウが、アルピコ側になかった。
委託業者は塩尻市内で見つかった。デリシアのバイヤー、赤羽美咲さんが打ち合わせの席に着くと、こう尋ねられたという。「どこまで許容できますか」。業者が気にしたのは、品質のばらつきだ。山雅の豆には色にムラがあった。
だが、それはよしとした。「クラブで作ったそのものを使う。ばらつきも生かすことにした」と赤羽さん。
理由があった。大豆の選別には、障がい福祉サービス事業所の利用者も加わっていて、売り上げの一部が賃金になる。「そこにも共感していた」とアルピコHDシェアード財務経理部の祖山裕紀さん。「弁当が農業プロジェクトを伝える機会になればと考えた」。応援の視線は、クラブだけでなく、その先の地域にも向く。
「特色のあるコラボ商品になった」とアルピコHD・ICT推進室の大原知起さん。包装にもこだわり、昨今の物価高もあって、もうけは少ないという。
食べてみた。豆ご飯はおこわ風。もちもちとした米に、ふっくらとあやみどりが載る。塩味がほどよい。確かに豆の青みはさまざまだが、気にならない。
見た目より味が肝心。それが改めて伝わる企画にもなれば、と生産者の端くれとして思った。