【ブドウ畑に吹く風~記者のワイン造り体験記】#3 芽かき作業

ブドウのため心で「ごめん」

激しい三寒四温を経て、やっと最高気温だけは安定してきた5月初旬。標高約660メートル、「日本アルプスワインバレー」最南端に位置する、松本市笹賀のガクファーム&ワイナリーのブドウ畑でも、「芽かき」作業の時季が近づいていた。
3月に剪定(せんてい)を体験した時は、灰色一色だったブドウの木。残した枝(結果母枝)の節ごとから、緑色の小さい新芽がたくさん出てきてかわいらしい。不要な芽を取り除き、新梢として伸びていく芽の数を10個程度に制限することで、最終的にはブドウの房数を1本の木で20房ほどに抑え、おいしく糖度の高いブドウにする。
作業は、手で新芽をぽろっと摘み取るだけ。だが、一度芽を取ってしまうとそこからは二度と出ず、まだ遅霜被害で芽がやられてしまう恐れもあるため、慎重に考えながら摘む必要がある。芽の成長も枝の先端と根元で差があり、成長に合わせて5月中に数回に分けて行うことが多い。
前回の剪定に続き、枝の数を管理し樹勢を整えたり、樹形を作っていくための大切な作業。「数年先を見越して、いい芽をちゃんと残すことが大事」とオーナーの古林利明さんは力を込める。
この「いい芽」の見分けが難しい。枝の上下に交互につく新芽の勢いやバランスを見ながら判断する。小さい芽の時点で、来年の結果母枝にする芽も考えて残しておく。
新芽の「間引き」は作物生産の常とはいえ、4枚、6枚と葉を増やしていく生まれたての新芽を摘むのは、若干心が痛む。「ごめん」と心で話しかけながら、手でぽろり。「全ては数カ月後のおいしいブドウ、おいしいワインのため」と、自分に言い聞かせた。

【メモ・ワインイベント】
▽塩尻ワイナリーフェスタ20、21日、塩尻市平出遺跡公園。「桔梗ケ原ワインバレー」内の15ワイナリーが参加。チケットは完売。
▽塩尻ワインテラス20、21日午後1~9時、JR塩尻駅前公園。日替わりでワイン6種を提供。