【ビジネスの明日】#43 ミナホ代表 白坂巧さん

「お客優先」で努力を重ねて

「子どものころから自分の好きな味があった。出発点もその味」。そう語るのは松本、安曇野市でラーメン店4店を運営するミナホ(安曇野市豊科南穂高)の白坂巧代表(39)。独学で作った「鶏白湯(ぱいたん)スープ」がベースのラーメンが人気を呼び急成長。FC(フランチャイズ)展開も実現したが「経営者のエゴだった」と省み、地元密着にかじを切る。
2016年、松本市石芝に創業店「らぁ麺しろがね松本本店」をオープン。それまで、飲食店の経験はなく「1人でできる」と、決め込んでいたが、オープン当日に店先にできた約50人の客の行列を見て翻意。
5、6人の友人に手伝ってもらい運営のノウハウを学びながら、店に必要なことと感じたのが「売り切れ終了」にしては駄目ということ。「最初はそのスタイルが格好良いと思っていたが、お客さんをがっかりさせるだけ。それが分かってからは寝ずに頑張った」と振り返る。
独学で生み出した「鶏白湯スープ」をベースにした主力商品「鶏コテらぁ麺」の味とともに、そうした「お客優先」の店の姿勢が受け入れられ、「しろがね」を安曇野市に2店舗と、松本市には趣の異なる「中華そばくにまつ」(新村)をオープンするなど多店舗展開。
21年9月には那覇市にFC1号店をオープンさせたのを皮切りに、埼玉、千葉県にも展開した。しかし、FC店には冷凍したスープを送るなどコストがかかる上、現地スタッフの商品のクオリティーを保つ意識が欠けていたことが徐々に判明。
「これでは、数字(売り上げ)は伸びるが地元(県内)で頑張ってくれているスタッフに失礼。全体の士気も下がる」と気付き、今年10月にFC3店を閉店した。
「『信州の味を全国に』と思っていたが、土地柄や風土が違う。今後FCをやるにしてもいい勉強になった」と、前向きに捉えている。

高校卒業後、自動車整備士として働き、30歳前後で独立し、自動車販売などの仕事もした。15年、知り合いの店の手伝いをしたのをきっかけにラーメンの道へ。「自動車関係の仕事では、車検などでどんなに頑張っても『高い』としか言われなかった。ラーメンは1杯だけで1日に何度も『ありがとう』と言ってもらえる。そこに引かれた」としみじみと語る。
今後は地元でラーメン店以外の出店も検討しており、「地元を盛り上げ、県外客などを呼び込みたい」と意気込む。

【プロフィル】
しらさか・たくみ 1983年、安曇野市豊科南穂高出身。松商学園高卒。千葉県の自動車関係の専門学校で学んだ後、整備士として就職。2016年、ミナホを設立し、代表就任。19年法人化。同市豊科南穂高在住。