【小林千寿・碁縁旅人】#46 海外で病気・けがをした時

ウィーンの老舗菓子店デメルのイースターの春の飾り付け(2007年)。この年に指を切ってしまった

コロナ禍により、世界の医療、衛生状況の違いが国内にも少し伝わったと思います。
私は長年の海外滞在中に盲腸の手術で入院、さらに足の甲の骨折、指を包丁で切って病院のお世話になりました。
盲腸手術は1980年、オーストラリア・シドニー。3カ月の囲碁普及の仕事中に右脇腹がシクシク痛くなり、ついに病院に行ったのですが、「虫垂炎で手術が必要」との診断。痛みが治まれば帰国も可能とのことで、「1週間様子を見て」となった、その夜中に激痛に襲われ、救急車で運ばれ翌日手術。盲腸の手術は手術のうちに入らないといわれても人生初めての入院、手術で、それも海外。点滴の針が私には太すぎて何回もやり直し。全身麻酔が効きすぎて目が覚めても体が動かず呼吸困難になりパニックになったこと。
病院の施設は良く自動カーテン、病院食がメニューから選べてホテルのレストランより美味(おい)しかったこと。カトリックの病院で毎朝、隣の同系の学校の生徒がシスターとお花を持ってお見舞いに来てくれたこと。帰国してから癒着が分かり、長年大変で、特に仕事がら長時間の正座に支障が出ました。
2004年夏、ドイツ・ハンブルクの公園を散歩中に草に隠れた穴に足を取られ右足の甲を骨折した時は、サポーターと、痛み止めの注射を自分でお腹(なか)に刺す処方でした。注射器を使ったことがなく、お腹を見ると緊張してお腹の筋肉が硬くなって困りました。
07年、オーストリア・ウィーンに住んでいた時の週末の朝、ドイツ風の硬いパンを、パン切りナイフで切ろうとした瞬間に滑り、左の人さし指に。切れが良すぎて血が出ない!パカっと開いた指が白くゾクッとしました。救急病院に行ったのですが、縫って塗り薬をつけて包帯を巻いただけ。化膿(かのう)止め、痛み止めの薬もなく3日後に再診を受けるよう指示されました。
その時々に日本のドクターに電話をしてアドバイスを受けましたが、簡単な病気・けがでも国内とは処方が違いました。そして世界の病院は多民族の患者を診ているのだと、改めて気付かされたのです。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)