生産者と消費者が共に米作り 「ZENZENCLUB」発足

農業の魅力分かち合いたい

後継者不足、耕作放棄地の増加、農産物の価格低下など、農業が抱える課題は多い。合同会社ぐるり代表、中村健太さん(41、安曇野市穂高牧)は、食事療法士の辻野将之さん(45、同市穂高)、小学校職員の矢萩篤史さん(42、松本市女鳥羽)と協力し、現状を打破しようと6月、「ZENZENCLUB(ゼンゼンクラブ)」をつくった。
「作る人」「食べる人」という枠を超え、一緒に自然栽培で米作りをする。農業の大切さを伝え、体を動かす心地よさを体験してもらい、農業を身近に感じ、楽しんでもらう狙いという。
築約50年の空き家をシェアハウスにして有効活用し、田畑の管理にも利用しようと「ZENZENHOUSE改修プロジェクト」も開始。現在、改修費調達のため、クラウドファンディングに挑戦中だ。

CFにも挑戦メンバー募る

合同会社ぐるり代表、中村健太さんは神奈川県から安曇野市に移住し、米作りをしたり、そば店を経営したり。店は閉店したが、4年前から常連だった食事療法士、辻野将之さんと米作りを始めた。今年、辻野さんが新規就農の拠点をと、8千平方メートルの田畑が付いた家を借りた。小学校職員の矢萩篤史さんも、「子どもに本当の学びの場を」と思っていたといい、3人の思いが「米作り」で一致した。
中村さんは現在、ドーナツ製造販売をするなど、3人がそれぞれ本業を持ちながらの取り組み。さすがに「この面積は広すぎる」と、食べるだけだった人、米作りに興味がある人らを巻き込もうと、「ZENZENCLUB」を発足させた。
中村さんは、農業に従事する人の高齢化、後継者不足だけでなく、企業の農業参入にも危機感を感じたという。肥料を多用するのではないか。効率重視で、米を作らないかもしれない。現状のままでは米農家がますます減ってしまう…。「新しい兼業農家を」と模索し、思いついたという。
農地や農業を次世代に残していくことを核に、「ZEN|」は農薬や肥料を使わない自然栽培で米を作るクラブ。草取りなども人力、もしくは人力で動かす機械で行うなど、農業の原点に返った取り組みだ。品種はササニシキなどさっぱりした味わいの米を作る計画。今月3、4、7日、同クラブメンバーなど約100人が参加し田植えをした。
田畑とともに借りた家は、シェアハウスとして利用する。トイレを水洗にする、洗面所を作る、壁を塗り直すなど、総額250万~300万円かかるという改修を予定、25日までクラウドファンディング(CF)に挑戦している。「まずは50万円」と中村さん。
「農業はつらいというイメージが刷り込まれている」と辻野さん。「土に触れ、自然と親しむ農業は、心と体の健康に効果的。自分がやってみると、楽しいし、気持ちがいい」と力を込める。
20組を目標に、「ZENZENメンバー」を募集中。現在は県内外の4家族がメンバーだ。1人での参加も可能という。農作業を手伝うサポーターも募集している。11月には、自然栽培米の販売をスタート、来年は大豆を栽培し、みそやしょうゆ造りも視野に入れる。中村さんは「田んぼに入ると、大人も子どもも表情が変わる。労働の後のご飯はおいしい。そんな体験を多くの人と分かち合えたら」としている。

【ZENZENメンバー】入会金なし。年会費1人5万5000円、ペア・ファミリー6万6000円。同クラブで栽培した米20キロがもらえる、シェアハウスに無料で何度でも宿泊できる(田んぼ作業やイベント時)などの特典がある。農作業、家の改修などを手伝ってくれる「ZENZENサポーター」も募集している。7月9日に草取り、8月13日にリフォーム(しっくい塗り)などを予定している。参加費1回500円(メンバー、中学生以下は無料)。
問い合わせ、活動の詳細、クラウドファンディングの支援などは = ホームページ=から。