【記者兼農家のUターンto農】#109 畑の特徴

野菜作りの「テロワール」

春植えのリーフレタスしか作らない畑では、収穫を終えて、早くも来年に向けた準備が始まっている。
マルチシートを剥いで、平らに耕す。土作りの手始めに、レタスの連作障害を防ぎ、緑肥にもなるイネ科のソルゴー(ソルガム)の種をまいて、芽吹きを待つ。
適度に雨が降ると、うれしい。だが、雨が上がって、乾いていく畑の表面を見渡して、がっかりすることもある。黒い土のあちこちに、白っぽい石が顔をのぞかせているのだ。
こぶし大はざらで、ソフトボールくらいのことも、たまにある。石拾いは毎年のようにしているのに、こんなに大きいのが新たに見つかるのはどうしたわけか。うちの畑は無尽蔵に石を抱えているらしい。
同じ嘆きをワイン生産者から聞いた。シャトーメルシャン・桔梗ケ原ワイナリー(塩尻市宗賀)は、うちの近くでもブドウを作っている。同市片丘にある、その畑からも石がごろごろ出ると、高瀬秀樹ワイナリー長(43)が話してくれた。
ただ、ブドウ作りには、一概に悪いことでもないようだ。石の多さは、水はけの良さの表れと見ることができる。確かに、うちの畑も水はけはいい。
片丘の土壌については、桔梗ケ原より固いとも教えてくれた。これも野菜作りには不利だが、ブドウにとっては「(渋み成分の)タンニンが濃縮される感じがある」と高瀬さん。特徴のあるワイン造りにつながる。
ワインの世界では、土壌を含め、地形や気象など畑を取り巻く自然環境を「テロワール」と呼び、ワインの個性を形作ると考える。フランス語の言葉だ。オシャレで縁遠いと思っていたが、近所の畑についての解説を聞くと、まさに手触り感を持って響いてくる。
土壌によって醸される味わいがあるというのは、ブドウに限らないのではないか。石拾いをしながら、野菜作りのテロワールを考えてみる。