「遊び」「おもちゃ」考える

「東京おもちゃ美術館」(東京都)館長の多田千尋さんが1日、安曇野市を拠点に活動する「おもちゃの広場」を訪れました。運営メンバーとミニ交流会を行い、改めておもちゃに対する思いや願いなどを伝えました。話の一部を紹介します。

学び生きる力育む

東京おもちゃ美術館という名称に「なぜ美術館?」と質問されることがあります。「おもちゃ=遊び道具」というイメージを持つ人が多いと思いますが、おもちゃは子どもが初めて触れる芸術。「おもちゃ=アート」だと感じて名付けました。美術館は特別なものではなく、身近にあって気軽に行けるものであってほしいという願いも込めました。
昨年11月にオープンした木曽おもちゃ美術館(木曽町新開)を含め、おもちゃ美術館は全国に12館あります。展示品の多くは自由に触れて遊ぶことができ、「おもちゃ=コミュニケーションのツール」となっています。
おもちゃにはそれぞれ基本的な遊び方があり、それを協会が認定した「おもちゃコンサルタント」が伝えます。来館者は教わった通りに遊んでもいいですが、やっていくうちに遊びを発展させたり、一緒に遊ぶメンバーによってやり方を変えたりといった楽しみ方もできます。
また、この美術館のいいところは「多世代交流」が生まれることです。例えば、難解なパズルを解けずにいる高齢者に小学生が教えたり、逆に伝統的なおもちゃの遊び方を高齢者が教えたりといったように。
私たちの国では、毎年あふれるほどのおもちゃが発売され、残念なことにすぐ消えてしまうものも少なくありません。そのような市販の中から、優良なおもちゃを選ぶ指針となる「グッド・トイ」を選ぶ活動を1985年にスタートしました。
子どもたちは遊びを通して学び、生きる力を付けます。大人にとっても遊びは人生を豊かにしてくれます。グッド・トイを通して、日本のおもちゃ文化の向上を願っています。

多田さんは、大町市で来秋開く「北アルプス国際芸術祭2024」に向けて、実行委員会が1日に催した「第1回北アルプスまほろば塾」のゲストとして長野県へ。その前後にスタッフの研修を兼ねて安曇野市と木曽町を訪れました。

「グッド・トイ」の良さを おもちゃの広場で体感して

運営メンバーとのやりとりを紹介します。
◆参加者「『子どもの発達が一番の悩み』と話しているお母さんが多いです。気にし過ぎると、お母さんも子どもも不調になります」
多田さん「木のおもちゃで遊ぶと五感を使います。五感を使うと発達が促される。それはゲームや動画にはできないことです。おもちゃで遊ぶ様子を見ていると、その子の得意なことや苦手なことが分かります」
◆参加者「木のおもちゃは、手に触れた感触や匂い、音に癒やされている感じがします。大人も楽しめると思います」
多田さん「それがグッド・トイの良さです。本来おもちゃは子どもだけのものではなく、全世代が楽しめるもの。みんなが交流するためのツールです。そんなことを、おもちゃの広場で体感してほしいと思います。おもちゃ美術館へもぜひ足を運んでください」

【プロフィル】
【ただ・ちひろ】1961年、東京都生まれ。明治大法学部卒。ロシア・プーシキン大学で幼児教育・児童文化などを研究。乳幼児から高齢者までの遊び・芸術によるアクティビティーケア、世代間交流の実践・研究に取り組む。東京おもちゃ美術館などを運営する認定NPO法人「芸術と遊び創造協会」(東京都)理事長。

【メモ】
【おもちゃの広場】同協会が認定したおもちゃコンサルタントが、「グッド・トイ」で選ばれたおもちゃを使って開く子育てサロン。親子だけでなく多世代が触れ合える場を地域に開くことを目的に2004年から始まり、全国200カ所以上で開かれている。こちらから。