ゲストハウスと移動販売 大久保のりやさん

安曇野市明科東川手の大久保のりやさん(44)は、妻さやかさんと2人の子どもを育てながら「安曇野ふくろうゲストハウス」(同市穂高)と、移動販売「安曇野ふくろうおむすび商店」を営んでいます。起業までの歩みや子育てについて聞きました。
★東京から長野へ
大久保さんは東京都出身。都内の大学に在学中は旅サークルに所属し、バックパッカーとしてアフガニスタンやインド、パキスタンなどを回りました。そこで泊まったゲストハウスが本当に楽しかったと言い、「『初めまして』の人と語り合い、文化の違いや宗教による生活スタイルなどを学びました」。
旅行資金は革靴製造の会社でアルバイトをしてためました。ここを選んだ理由は、自分が大切にする靴を直したかったから。卒業後は靴修理のベンチャー企業に就職します。
現場で活躍していましたが、けがをしてマネジメント業務に異動します。国内外の出張も多く、自宅を頻繁に空ける生活に。生まれたばかりの長女にこさん(7)と過ごす時間を大切にしたい、同じ場所や物事にこだわりすぎて苦しくなるより、時には立ち止まり手放すことも必要では─と働き方を考えるようになり、17年勤めた会社を退職します。
そして気分転換のため友人がいる池田町へ。「ピンときて」2019年に移住します。
★ゲストハウスとおむすび店
「もともと田舎は好きだった」という大久保さん。ゲストハウスで起業することは全く考えていませんでしたが、不動産業者に紹介された物件を見た時、バックパッカーとして泊まった時の記憶がよみがえり「やってみよう」と即決。購入、改装して同年オープンします。長男いまちゃん(4)もこの年誕生します。
その後、安曇野市の農家民泊に登録。同じく東京からIターンして減農薬・無農薬栽培をする「のぐちファーム」(穂高柏原)代表の野口雄貴さんと出会い、同ファームの米にほれこんで、おむすび店を22年に始めました。
具材は東京時代の知り合いがいる築地からじかに仕入れ、のぐちファーム直売所、安曇野市役所、しゃくなげの湯(穂高有明)などを回っています(スケジュールはインスタグラムに)。
★移住と子育て
「移住して良かったのは、子どもが自然の中で毎日過ごせること。すべてを壊してしまうこともあれば、心を穏やかにしてくれることもある自然は、子どもとよく似ている。身をもって感じているのでは」と大久保さん。
子どもに関することは、翻訳の仕事をしているさやかさんと予定を擦り合わせて分担しており、「働き方を変えたことで子育てに関われるようになり、本当に良かったです」。
1、2月には市民有志でつくる団体「農家と生きる」のメンバーと能登半島地震で被災した七尾市へ2回行き、炊き出しをした大久保さん。市内でかつて栽培していた麻の復活、活用に取り組む「安曇野グリーンモアプロジェクト」にもさらに力を注ぎたいと言います。