【ブドウ畑に吹く風~記者のワイン造り体験記】#8 土と草

乗用草刈り機に乗ってみる

立秋(今年は8日)を過ぎ、お盆も過ぎて暦の上では秋。盛んだったブドウの木の成長は一段落し、ピノノワールやシラーなど、早い房ではヴェレゾン(色付き)が始まった。
とはいえ、日本の夏は長く、残暑は厳しい。ブドウ畑の草は、まだまだ伸び盛りだ。
ここで土壌の話をしたい。ワイン造りでは「テロワール」という言葉をよく聞く。その土地の気候や気温、標高、土壌など、ブドウを育み、ワインの味を決定づける、土地の個性のことだ。
松本市笹賀のガクファーム&ワイナリー。梓川や奈良井川、鎖川などによって作られた複合扇状地の、奈良井川沿いに位置する。畑の土地は、かつて河床だったといい、石や砂利などの礫(れき)質で、水はけがよくミネラルが豊富な土壌だ。
ワイン造りには良いとされる礫(れき)質の土だが、草もたくさん生える。足元にはクローバー(シロツメクサ)、タンポポ、立派なヨモギがびっしり。中でもクローバーは、植物の成長に必要な窒素を供給する緑肥として、自然栽培の世界でもおなじみだ。
6月から、20日に1度くらい行う草刈り。オーナーの古林利明さんが「体験してみませんか」と言うので、喜んでお邪魔した。
そこには、赤色に輝くゴーカート…ではなく、乗用草刈り機があった。これで垣根と垣根の間の草を刈る。
早速乗ってみた。操縦も、エンジンをかけ、草を刈る高さ(今回は40ミリ)を選択、右のレバーで速さが調節できる。ゴーカートより少し操作が多いくらいだ。
垣根の間は2メートルほど。まずは恐る恐る、真ん中を行く。端まで行ったら、曲がりやすい樹間を戻る。車はゆっくりブドウ畑を進む。草いきれと、刈った草から立ち上る独特の匂いが、盛夏を感じさせる。
樹間は真ん中、右、左の3回走るとのことで、少し慣れてきたらブドウの木すれすれまで攻めて草刈り。古林さんに「上手になったね」と褒められた。
車で刈れないブドウの木の根元の草は、刈り払い機で。大切なブドウの木を切っては大変なので、こちらは遠慮することにした。