おもちゃインストラクター田中さんに聞く―「手作り」のアイデア

安曇野市豊科のおもちゃインストラクター田中京子さん(65)は、保育士として働く傍ら児童館や保育施設で手作りおもちゃのワークショップを開き、子どもたちに大人気です。おもちゃを生み出すアイデアや思いなどを聞きました。

こんなものあったらを形に

★私のおもちゃは“がらくた”
小さい容器の中で泳ぐ金魚、ペットボトルの中に設けた仕切りの穴に鉛筆キャップを入れて遊ぶおもちゃ、ハンカチで作った人形…。田中さんの自宅には、さまざまな手作りおもちゃがあります。
作る上でのこだわりは、ペットボトルやトイレットペーパーの芯といった身近にある物を使い、誰でも簡単に作れること。アレンジして愛着が持てるものにすることも大切にしています。
これらを生み出すアイデアのヒントは、保育現場といいます。「こんなものがあったら」「こんな感覚を味わってほしい」という思いを形にしています。例えば金魚が泳ぐおもちゃは、子どもに揺れる感覚を感じてほしいと思って作りました。「眠くて泣いている子に持たせたら、揺らしているうちに寝ていました」
子どもが好むおもちゃは一人一人違い、大人が面白いと思っても反応がいまひとつという場合も。作る過程で失敗やアクシデントがあってもそれを楽しみ、次に生かしているといいます。
おもちゃを作る時は、友人や仲間の協力を得ています。「みんなに関わってもらうといろいろなアイデアが浮かび、作業もはかどります。私は不器用なので、困ったときはすぐに相談してアドバイスをもらいます。それが自分の学びにつながっています」

★おもちゃは「人と人をつなぐツール」
おもちゃは、人との付き合い方を育めるという田中さん。小学校高学年や中学生になると知識も増えて、一緒に遊んでいると大人が教わることもたくさんあるとか。「上下関係ではなく、横並びの関係で一緒に過ごす時間が持てるのは素晴らしいことです」
田中さんは、子ども時代に体が弱かったこともあって一人遊びが好きで、家にあるもので工作をしたのが今の原点といいます。幼稚園教諭になり、結婚、子育てを経て保育士の免許も取得。「子どもも大人も一緒にアイデアを出し合い、作り、楽しさを共有したい」と思うようになり、物々交換のような「自分の力の交換会」をモットーにみんなでおもちゃ作りをしているといいます。
「ワークショップは『私と私の周りの人が幸せになる』をコンセプトに、ボランティアで行っています。私が幸せでいられることが大事。私が楽しいから、何かを得たいからやっています」

★スキルアップを目指す
毎月1回、三郷児童館(安曇野市三郷明盛)で乳幼児親子を対象にした「ちょこっとタイム」という講座を開いています。時間は30分。絵本の読み聞かせと工作を楽しんでもらっています。
今後の目標は手作りおもちゃのスキルアップといい、「もう少し質のいいものを作る研究をしたい」。夢は宮崎駿監督の映画「崖の上のポニョ」のような、高齢者施設と保育園が併設する場所をつくることといいます。
「おもちゃは創造力を育み、作る喜びを味わえます。手作りおもちゃは大人や高齢者施設、3世代でやっても楽しいです」