環境引かれ移住 安曇野で食肉加工店開いた夫婦

夫婦で日々手作り 二人三脚で

冬。安曇野市穂高有明で「安曇野ご馳走(ちそう)肉工房」を営む国分(こくぶ)信之さん(58)にとって、待ち望んだ季節がやってきた。理由は「主力の手作りソーセージを生み出すためには、工房内の室温が低い方が良く、調整が楽だから」と言う。
前シーズンの冬は工房ができたばかりで、製品は試作中だった。昨年4月に販売を始め、「地元の旬を取り入れたい」と、近隣から分けてもらったサンショウの葉や実、ミョウガなどを入れたソーセージを作った。
ハムやスモークチキンなども手がける。もともと畜肉加工品が好きで、「環境の良い所で手作りを」という希望をかなえた国分さん。賛同してくれた妻の文子(あやこ)さん(56)と共に工房に立つ毎日を送る。

子育てに区切り早期退職し起業

安曇野市でソーセージやハムなどを手作りする国分信之さん(穂高有明)は東京生まれ。大学卒業後、大手食品メーカーで営業職に就いた。外食関係をメインに仕事をしていたが、30歳ごろから「消費者の反応や思いを直接知りたい」と考えるようになった。
54歳で退職。勤務が長かった福岡市で知った手作りのハム・ソーセージ工房など3カ所で修業を重ねた。多品種少量販売の製造工程を学ぶことに喜びを感じたという。
大手企業の営業マンから物づくり業への転身は、妻の文子さんの賛成があって成り立った。二人は大学のスケート部で、選手とマネジャーとして知り合った。選手時代からの信之さんを見ていた文子さんは、人間性や能力に信頼は置いていたが、「子育てが一段落してから」と希望を出した。
工房の場所の選択には文子さんも積極的に参加。水環境の良い信州を有力候補にした結果、現在の場所を見つけたのは文子さんだった。店舗兼工房が立つのは、通称山麓線といわれる県道近くの市道脇。道より下になるが、開店日には目印の豚のオブジェを庭に出す。

素材にこだわり“信州の味”追求

工房完成後は、腸詰めしたソーセージをスモークハウスに並べてつるすなど、文子さんも一緒に作業。生肉を扱うため、全ての工程において室温は低い方がよいという。「初めての夏はとても暑く、冷房をフル稼働した。冬は助かる」と話す信之さんだが、文子さんは「体が冷えるのはこたえる」と苦笑する。
使用する豚肉は、飼料からエコにこだわる養豚場「あずみ野エコファーム」(大町市)産の「安曇野元気豚」。鶏肉は県農協直販(長野市)が扱う「信州福味鶏」。「少量の手作り工房だからこそ、原材料にこだわり、それを生かしたい」
地元の新鮮な野菜をソーセージの中に入れることにもこだわる。個人的なお気に入りは「生ソーセージ実山(みさん)椒(しょう)」と信之さん。松本一本ねぎを入れた商品も作っている。「本ワサビや野沢菜なども入れられたらいいのだけれど、特徴を生かすのが難しい。今後の課題」と、意欲を見せる。
店は、金曜日(午前10時~午後6時)と土・日、祝日(午前10時~午後5時)のみ開ける。ほかに、同市堀金烏川の「ほりがね物産センター」でも入手できる。安曇野ご馳走肉工房TEL080・8008・1567