中3・稲田さん×高1・水野さん 支え合った二人 初のピアノ演奏会

安曇野市三郷の中学3年生・稲田つづるさん(15)と松本市宮渕の高校1年生・水野遥佳さん(16)は3月17日、初のピアノデュオコンサートを、同市音楽文化ホールで開く。
二人は、就学前から松本市内の同じピアノ教室に通い、支え合ってきた友人。稲田さんは国際コンクールで、水野さんは国内のコンクールで、それぞれ優れた結果を出してきた実力の持ち主だ。
プロ奏者を目指す稲田さんが今春、音楽科のある東京の高校へ進学することから、二人を教える津田裕子さんがコンサートを発案。二人で準備を進めてきた。
演奏するのは、さまざまな味わいの17曲。「どれか1曲でも心に届いて、クラシック音楽の魅力を感じてもらえたら」と願う。

ピアノ通じて強い“つながり”

コンサートプログラムには、ショパン、チャイコフスキー、ラベルなど、時代も国もさまざまな作曲家の名前が並ぶ。曲想、テクニック、旋律の重なりなど、ピアノが持つ多彩な魅力を楽しんでほしいという、二人の思いが伝わる。
稲田つづるさんが独奏するのは、スクリャービンの「幻想ソナタ」など5曲。海を想起させる同作では、深くて静かな波の揺らめきや水面(みなも)のきらめきなどの中に、人間の心情を織り込んでいく。「同じような色味だが、その中にいろんな色があって、聴いているとじんわり伝わってくるものがある」と稲田さん。
リストの曲が二つ。そのうち「ため息」は、左右の手で旋律を歌い継いでいく技巧的な作品で、奏者の手の動きを見るのも楽しい。
一方の水野遥佳さんは6曲。ベートーベンの「イギリス国歌『ゴッド・セイブ・ザ・キング』による7つの変奏曲」では、耳なじみのある旋律が多彩な表情を見せ、メンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーソ」では、途中でがらりと変わる雰囲気に心が動かされる。
終盤は連弾で会場を盛り上げる。「春休み中だったり、新年度が始まる前だったりする時期。いろいろな思いに寄り添い、後押しできるコンサートにしたい」と、そろって声を弾ませる。

表現の稲田さん 正確な水野さん

稲田さんは、小学校3年の時に「ハンガリー子どものためのバルトーク国際ピアノコンクール」でグランプリを受賞。以降も国際的なコンクールで数々の賞を獲得してきた。
コロナ禍で思うように演奏機会を得られない時期が続いたが、それでもハンガリー、フランス、イタリアなどで演奏や研修を経験し、持ち前の表現力に磨きをかけてきた。
水野さんは、中学3年の時に県ピアノコンクールで大賞となる(大賞受賞者の選出は6年ぶり)など、国内で多くの好成績を収めてきた。松本深志高校に進学してからは、部活のバンドでドラムをたたきながら、ピアノにも変わらぬ情熱を注ぐ。
表現豊かな稲田さんと楽譜に忠実な水野さん。「目指す音楽の方向性が違う」と顔を見合わせて笑うが、幼い頃から家族ぐるみの付き合いで、姉妹のような間柄。19年からは毎週末、松本駅前にある別の音楽教室にも一緒に通い、その都度何でも話し、支え合ってきた。
稲田さんが東京へ拠点を移す4月以降も、心の距離は変わらない。「私たちはピアノを通じて、何物にも代えがたい“つながり”を得たし、そこに幸せを感じている。コンサートを、何かしらのつながりが生まれる時間にできたら」。そう言って顔を見合わせると、今度は静かにうなずいた。

【コンサート情報】
▽松本市音楽文化ホールで3月17日午後6時半開演。入場無料。ムーサピアノスクールTEL0263・88・3505
▽公開リハーサル…3月10日午後1時半、鈴木鎮一記念館(同市旭2)。演目は本公演と同じ。無料だが、座席数に限りがあるため、事前に同館(TEL0263・34・6645)へ申し込む。