姉妹都市に囲碁普及したい オーストリア・クラムザッハ訪問

海外で盛んにし魅力再発見へ

相手への土産は碁盤と碁石─。教室を運営し囲碁普及に努める峯岸芳夫さん(78、安曇野市三郷明盛)と一番弟子の川口希美さん(24、同温)は15日~6月14日、安曇野市の姉妹都市、オーストリアのクラムザッハを訪問する。囲碁を広め、交流を深める目的だ。日本料理も伝える。
2人は安曇野クラムザッハ友好会のメンバー。峯岸さんが4年前、友好会で同地を訪れた時、囲碁を伝えたが、滞在期間が短かく、定着には至らなかった。今回は個人で企画、2カ月間じっくり腰を据え、普及に努める。英語が堪能な川口さんは、強い味方だ。
「琴棋書画(きんきしょが)」。琴と囲碁と書と絵。文化人のたしなみを意味する熟語だ。「豊かな人生を送る一助になれたら。海外で関心が集まれば、国内人気も高まる」という期待もある。

折り紙や料理など日本文化伝える

15日~6月14日の2カ月間、オーストリアのクラムザッハに出かける峯岸芳夫さんと川口希美さん。囲碁を中心に、折り紙、料理(コロッケなど)といった日本で発展した文化を伝える目的だ。「ルールを覚えれば、言葉が通じなくても交流ができる。一つのコミュニケーションツール」。2人は囲碁の魅力をそう話す。
峯岸さんが本格的に囲碁と関わるようになったのは、松本市の松本大で囲碁を教えるようになった63歳の時。その後、安曇野市の寺や三郷公民館などで、囲碁教室を開催。現在は同市の自宅、三郷明盛の一日市場(ひといちば)公民館、市庁舎4階パノラマラウンジで開いている。
川口さんは峯岸さんに小学校3年の頃から師事する一番弟子。囲碁だけでなく、世界で働きたいと小さい頃から英語を勉強。フィリピンで留学生をサポートする仕事に従事したこともあり、さらに会話力を磨いた。囲碁、交流両面で峯岸さんを支える心強い存在だ。
峯岸さんは4年前、安曇野クラムザッハ友好会で現地を訪問した際、自作をドイツ語に訳してもらった「囲碁入門」の冊子を携えた。段ボール製の小さい碁盤といった囲碁入門セットも持って行き、普及に努めた。
「関心を示し、対局を始めた人もいたが、続かず残念」。せっかく種をまいたのに、なかなか芽が出ない状況に歯がゆさを覚えた。覚えるのには時間がかかる。そうした思いが2カ月という長期滞在につながった。

対局楽しむまで2カ月かけ交流

碁盤と碁石を2セット、さらに小さい碁盤を10枚持って乗り込む。現地ではホテルではなく、生活用品が一通りそろっているアパートに滞在し、子どもに多文化交流の機会を提供するNGOの協力で子どもに囲碁を教える。現地の人と相談しながら、大人と対局する機会も設ける。川口さんはコロッケ、ポテトサラダなどのレシピを持ち込み、料理交流会も予定している。
「2カ月あれば、対局を楽しめるようになるのでは」と峯岸さん。帰国後は、オンラインで対戦できるようにし、囲碁を通した交流を続ける。
古来、東洋の教養人がたしなむべき芸事として挙げられる琴棋書画。「音楽、書道、美術は科目にあるが、碁は日本の学校教育にはない」と峯岸さん。クラムザッハでの囲碁交流は一つのステップといい、その次の狙いも見据えている。
「日本では囲碁人口が減少しているが、頭の体操にもなるし、老若男女誰でも楽しめる。海外で認められて盛んになれば、日本でもその魅力が再発見されるのではないか」。囲碁の逆輸入につながればと考えている。