臨川寺本堂前に木曽ヒノキ木彫り3体 「龍」あやかりたい

上松町上松の、寝覚の床近くにある臨川寺本堂の向拝(こうはい)に、木曽ヒノキを彫った3体の立派な竜が鎮座している。正面にしつらてあるのは、思いや願いをかなえる力を持つとされる「宝珠(ほうじゅ)龍」。今年のえとの辰(たつ)にちなみ、注目されそうだ。
頭上約3メートルの三方でうねるのは、正面が縁起物の宝玉を抱えて天から降りてきた「雲雲龍宝珠龍」、側面が天に昇って竜になる「水雲龍昇り龍」と、天から舞い降りる「水雲龍降(くだ)り龍」。門柱には獅子2体と、人の悪夢を食べるという獏(ばく)2体もしつらえてある。
細密に彫られた竜は迫力満点だが、どこか親しみがある。表側は力強い表情が際立ち、裏側はうろこや周りの雲に目を奪われる。
見浦洞宗住職(56)によると、宝珠龍は自身の価値ある宝物に気付いて大切にする、昇り龍は努力して自身を高める、降り龍は自身を高めた後も慢心せず、皆のために降りてその力を使う─といい、仏教の教え「上求(じょうぐ)菩提(ぼだい)下化衆生(げけしゅじょう)」に通じるという。
本堂の改装に伴い、火災よけの水神として元小学校教諭で楽器制作などを手がける中澤準一さん(73、栄町)に制作を依頼。中澤さんは立川流の彫刻を基に構想を練り、参拝者の幸せを願い宝玉に三つの宝を入れたという。3年半かかって完成し2021年4月に奉納、開眼供養をした。
木彫は当初は白かったが、年月を経て茶色くなり、風格が出てきたという。見浦住職は「中国には急流を登ったコイが竜になる『登竜門』の伝説もある。成功に至る難しい関門を突破した─という意味で、寺を訪れた人が竜にあやかり、自分を高めてもらえれば」と話している。