きりっとしたまなざし、隆々とした筋肉…。その視線の先に立つと、目が合って思わずドキドキ。松本市役所本庁舎の前庭にある青年像は、今にも動きだしそうな美丈夫だ。
朝日村出身の彫刻家で、松本駅前の「播隆(ばんりゅう)上人像」の制作者でもある上條俊介(1899~1980年)の作品。市契約管財課によると1964(昭和39)年、13村を編入合併して10周年と、松本地域の新産業都市指定を記念して建てられた。
上條の作品を所蔵する朝日美術館によると、像の原型は1937(昭和12)年の官展に出品した「丘の上」。師の北村西望(長崎平和祈念像の作者)に「(それまでで)一番よくできた」と褒められた作品で、上條の希望か市の意向か分からないが、市のシンボル像に選ばれた。名称は沖縄が返還されていなかった当時、「日本の真ん中は松本辺り」とのことで命名されたといい、松本の人たちの自負がうかがえる。
現在は前庭のより目立つ場所に、市のマスコットキャラクター「アルプちゃん」の石像もある。2007年、市制100周年で市内の石材店が寄贈した。その重さは青年像の5倍!その存在感に、誇りに満ちた名を持つ美丈夫も、陰に隠れがち?
上條が誕生して120年。松本の都市計画を、観光や文化面も交えて論文にしていたという彼の、思い描いた都市になっているだろうか。答えは像が知っているかも。