【記者兼農家のUターンto農】 #4 カンリキ

小さいけれど頼れる仕事ぶり

小さな畑を任された。自宅わきに寝そべるように延びる細長い土地で、広さは30平方メートル余、つまりわずか10坪。家の北側にあって日当たりはあまりよくないが、地味(ちみ)は肥えていて、作物はよく育つという。
昨秋のうちに土にかぶせた稲わらが残っていた。何を作るか決める前に、とにかく耕しておこうとなった。土を軟らかくし、わらを土の中にすき込む。そうすれば、暖かくなって活発になった微生物が分解してくれる。
去年までこの畑を耕していた母が言った。「カンリキでやるだよ」。鋭角的な音の並びを初めて耳にしたとき、農業っぽくないな、と思ったのを覚えている。
管理機とは小さな耕運機を指す。3・5馬力ほどのエンジンで自走し、後部のロータリーを回す。トラクターに比べたらベビーサイズだが、爪を次々と土に突き立て、どしどし掘り起こす。その仕事ぶりに触れると、鋭角的な呼び名もしっくりしてくる。
今回の作業は、10分足らずで終わった。鍬(くわ)で耕したら小一時間はかかるだろう。
一丁上がり。管理機を物置にしまいに行こうとして、父に呼び止められた。畑に戻り、父は足で何カ所か踏んだ。軟らかいところと硬いところがある。「やり直しだ」
ロータリーが耕したところは軟らかいが、その脇に、耕した土がこぼれて表面を覆っただけのところがあって、そこは硬い。耕しにムラがあるのだ。見えているものだけで判断すると、仕事をし損なう。小さな畑にさっそく教えられた。
やり直しとはいえ、管理機のおかげで苦もなく終えた。父が中古で買ってから20年近く働いているのに、本当に頼りになる。
小さくても侮るなかれ。