【記者兼農家のUターンto農】#63 リーフの安値

採算ぎりぎり、もりもり食べる

レタス類が安い。信毎の朝刊経済面に載る「物産相場」欄を見てみよう。20日付によると、リーフレタスは、標準的な規格の4キロ(15株)が京浜市場で500円だった。うちから出荷したものが、実際にこの値段で売れたわけではないが、そう変わらない。
生産者には厳しい値付けだ。JAに払う販売手数料や段ボール箱代、それにタネや肥料など経費を差し引くと、ほとんど残らない。下手すると赤字。「豊作貧乏」という言葉が頭をよぎる。
去年の今頃は違った。同じ7月20日付の紙面で見ると、1050円。ほぼ倍だ。
なぜ、今年は安いのか。まず、ものが多い。地元JAの販売担当者によると、南佐久郡の産地からたくさん出ている。不安定な天候で生育が遅れ、もっと早く出荷されるはずのものが今頃になったという。南佐久の川上村といえば、全国的なレタス産地。「かなわない」と思った。
父は、「去年の値が良かったので、リーフを作る人が増えたんだろう」と言う。そんな単純なことかと思ったが、JA担当者は「それもある」と言う。
これらが供給側の要因で、一方、需要はというと、外食やスーパーでの販売が例年に及ばない。物価高のあおりでレタス類に回るお金が削られているのではという。
供給が増え、需要は減った。安くなるのは当たり前だ。天候や生産者心理が絡み、社会情勢が影響した。ただし、それぞれの要因が逆に働けば高値になるはずで、実際、4キロ3000円なんて時もある。野菜生産とは賭けのようでもある。
今の状況、買う方はうれしいだろう。しかも「品質は安定している」とJA担当者。試しに栄養を調べると、リーフは、カルシウムや食物繊維、ビタミンCが、同じ重さの玉レタスの2、3倍ある。意外にもベータカロテンが豊富で、ニンジンの3割余りの量を含む。
うちではもりもり食べている。お金はもうからないが、健康の蓄えにはなっているはずだ。