【記者兼農家のUターンto農】#11 都会の売り場を確保せよ

産地切り替え「損して得取れ」

JAの青果出荷場の掲示板に、見慣れない張り紙を見つけた。
「レタス類産地切り替えフェア」。5月中旬、中信地区で取れたものを大阪のスーパーマーケットに売り込んだということのようだ。
チェーン店の売り場にレタス類が並ぶ写真が添えられていた。うちのリーフレタスもあるのかもしれない。しげしげと見つめた。
「98円」が目立つ。「お買得品」とも。買い物上手の大阪人を招き寄せる目玉らしい。安さが強調されているのは寂しいが、ドーンとお薦めされている様子にちょっと誇らしくもなる。
それにしても、この「フェア」って?
「例年、やっていることなんです」と、JA松本ハイランド塩尻支所の販売担当者が説明してくれた。中信地区の出荷が本格化する時期に合わせ、大消費地で売り込みをかけるのだという。
話の中で「前段産地」という言葉を知った。先駆けて収穫期を迎える地域を指す。レタス類で言えば、九州や兵庫・淡路、茨城といった温暖な地域だ。
この前段産地からの出荷量が落ち着き、品質も落ち目になる。そんな頃を見計らって、生きのいい中信地区産をぶつけ、売り場を奪い取る。フェアは、そんなイメージだ。
品質に加えて、値段もポイントになる。「高いと買いが弱くなる」。安さが産地切り替えを考えているスーパーの背中を押す。「損して得取れ、です」
4月下旬の目揃(めぞろえ)会を思い出した。販売担当者は「コロナ禍だが、売り先はあるのでしっかり出荷してほしい」と言っていた。策の一つがこれだったのか。
「フェアはうまくいったと思います」。その後、レタス類の値動きは堅調だった。
それどころか、例年にない上がりようを見せた。フェアの効果に加え、担当者も想定していなかったことがコロナ禍によって起きていた。来週に続く。