コロナ禍で作付け減 逆に高値に
信毎の経済面を開くと、下の方に「物産相場」という表がある。時季になると、関係者は目を凝らして閲読する欄だ。うちが出荷したリーフレタス(15株入り1箱)に実際に付いた値とはずれるものの、参考にはなる。
今年はレタス類がずいぶん高い。例えば、今月1日の相場を翌2日の新聞で見ると、京浜の市場でL規格のリーフに付いた標準的な値は2350円(15株入り1箱)。これが去年の同じ日を見ると700円とある。今年は3倍以上だ。すごい。
でも、待てよ。4月の目揃(めぞろえ)会では、割と悲観的な見通しが示されていた。特に外食関係への販売は「コロナ禍で非常に厳しい」と。何が違ったのか。
出荷量が非常に少なかったから。JA松本ハイランドの塩尻、朝日両支所の販売担当者の説明を一言でいうとそうなる。
少ない理由の一つにはコロナ禍があるという。需要が減るだろうと見越し、作付け面積を減らす農家が多かった。全体で去年の7、8割だったという。アナウンスメント効果ということか。加えて、4月に低温が続いたため、5月からの出荷が伸び悩んだようだ。
しかし、需要は底堅かった。市場には常に供給すべき一定量、下限があるという。さらに一般のスーパー向けは、巣ごもり需要でかえって底上げされた面もある。
需要に対して品薄なら価格は高くなる。まさに市場原理による高値だった。コロナ禍のあやを感じた。
幸い、うちは例年並みの量を出荷できた。だが、そう喜んでもいられないらしい。「これで秋には安くなるじゃねえかな」と父。高値を見て作付けを増やす農家があると予想するからだ。
その後、リーフレタスの値は下落し、15日は900円。一大産地、佐久地方の出荷が本格化してきたらしい。
一方の品質は、うちのリーフの場合、価格が高かった時と変わらないが、暑くなった今の方がかえっておいしく食べられる。市場原理の不条理を味わう気分がした。