【記者兼農家のUターンto農】#110 農家組合

農村をカバーする草の根組織

Uターンしてから、地域にさまざまな組織があることにびっくりしている。「農家組合」もその一つだ。
年度末を控えた2月半ば、農家組合の会議開催の通知が来た。常会(自治会)内の持ち回りで、うちが新年度の担当になったのだ。「お前が行ってこい」と父。どんな組織なのか、農業協同組合(農協=JA)と違うのか。半ば取材気分で地元のJA施設に出かけた。
はっきりしたのは、JAの配布物を回覧する役割くらい。集落ごとの「農家組合長」を決める話し合いでは、「若い人で」という理由で50歳間近の私に決まった。「この展開、前にもあった」と、地元の祭典の役員決めを思い出した。
慣習化した仕組みが粛々と下の世代に引き継がれていく。農家組合もそんな組織の一つなのかもしれない。
そんな印象でいると、今度は組合長研修会なる案内が来た。今月上旬、JA松本ハイランドの本所に行って驚いた。大会議室が満杯、参加者は100人を優に超えるという。
多さの理由は、田中均組合長や講師の話を聞いて見えてきた。農家組合は、JAの全ての地域をカバーし、組合員を集落でまとめる基礎的な組織ということらしい。会議室の混み合いぶりが、ぎゅっと束ねられた網の目に見えてくる。
農家組合は、JAの理事ら役員を選出する一方、組合員の声を聞き、反映させる役割があるという。「組合員みなさんが主人公のJA」を実現するのに大事な組織なのだ。
顧みて、配布物の中継役でしかない現状とのギャップは大きい。コロナ下で集会活動ができなかったこともあり、JAなどで活性化策を検討するという。
コロナで元気がなくなったとは、地域組織でよく聞く話だ。必要とされるなら再び盛り上がるだろうし、重荷だけならそのまま消えた方がいい。
農家組合がどうなるか、新参者には読めない。ただ、大会議室でかいま見た組織力に使いようはありそうだ。