【ビジネスの明日】#28 ツカマストアー社長 犬飼浩一さん

コロナ禍でも信頼関係で成長

「うちの一番のお客さんは商品を出してくれる農家。その人たちをこれからも応援し続けたい」。こう話すのは「生産者直売所アルプス市場」(松本市寿白瀬渕)を運営するツカマストアー(同)の犬飼浩一社長(55)だ。コロナ禍で消費活動が停滞するなか、着実に売り上げを伸ばしている。
1996年10月に中信地区では初となる民間の直売所としてオープンしたアルプス市場。犬飼さんはその翌年から店の経営を担っている。
オープン当初は、店に商品を出してくれる生産者は35人ほどで、陳列棚は「すかすか」状態。売るものがなかったという。「毎晩、毎晩、生産者に電話をして商品を出してくれるように頼んだ」と振り返る。
その苦い経験から学んだことが「生産者ファースト」。「生産者が一番嫌うことは自分の商品が売れ残ること」とし、売るための工夫に腐心する。
例えばキュウリ。「曲がったキュウリでもそれだけをまとめてパッケージすれば漬物用などとして売れるが、真っすぐなキュウリと混在させては売れない」。こうした消費者ニーズなどを生産者に伝えることが、売る側の役割と捉え、従業員にも生産者への目配り、気配りを徹底している。
「商品を出してもらうだけで、売れなければ返品するというのは、生産者に失礼。売るのが自分たちの仕事」と力を込める。

「5年後、必ず生産者は減ってくる」。現在、同店と取り引きのある生産者は約500人。その人たちの平均年齢は70歳に達しており、新たな生産者の確保は大きな課題だ。
「農業をやらない一番の理由は、安定収入が得られないこと」と強調。「自分たちにできることは、いかに多くの人に買ってもらうかだ」と、7月から、オンラインショップを開設。約2カ月で、全国から約80件の注文が入るなど手応えをつかんでいる。
また、大規模農家と取り引きするため、大都市圏に商品を効率的に流通させる戦略も描いている。

犬飼さんが同店に入店した当時の年間売り上げは約2億円。25年たった現在の売り上げは6億円以上。昨年来のコロナ禍でも数字は堅調を維持している。
この数字について「世間ではコロナ禍で『家食が増えたから』などといわれるが、それはあまり関係ない。生産者と消費者との間にこつこつと積み重ねた信頼関係による成長分」と胸を張る。

【プロフィル
いぬかい・こういち 1966年、塩尻市出身。塩尻(現塩尻志学館)高校、松商短大卒。消費財化学メーカーを経て、1997年、ツカマストアー入社。2002年、社長就任。同市広丘堅石。